- 大学を卒業したら地元で地方公務員として働きたい。
- 転職して地方公務員として前職で培った力を地域貢献に役立てたい。
- 営利目的ではない仕事をしてみたい。
- 田舎で第二の人生を歩みたい。
などの理由で、「地方公務員」を目指す人も多いのではないでしょうか。
ただ、「地方公務員」といってもその種類・職種は多く、行政職以外にも思っている以上に様々な仕事があります。
そこで今回は地方公務員を目指す人の選択肢が少しでも増えるよう、地方公務員の種類(職種)について、ご紹介&解説します。
(東京都や特別区などは特殊なので今回は除きます。)
地方公務員の試験区分と受験資格
試験区分がたくさんあって迷う
まず地方公務員の試験区分ですが、おおよそ下記のとおり区分されています。
- 大学卒業程度(上級試験とも呼ばれます)
- 短期大学卒業程度(中級試験)
- 高校卒業程度(初級試験)
- 社会人経験者枠(民間企業等職務経験者枠)
- 障害者枠(昔は身体障害者だけが対象でしたが、ここ数年で療育手帳保有者や精神障害者保健福祉手帳保有者も受験できる自治体が一気に増えました。)
- 就職氷河期世代枠(2020年度からスタートとした試験で、35歳程度以上の人が受験でき、学歴・職歴は一切関係ないのが特徴、非正規雇用、フリーター、ニート向きの試験)
高校3年生から50代の社会人、障害者やニートまでありとあらゆる人が受験できるのが今の公務員試験の実態です。
試験区分に応じて試験内容が違う(試験勉強の範囲が変わる)
一般的に公務員試験では、「教養試験、専門試験、論作文試験、集団討論、個別面接、適性検査」などが課されます。
自治体によっては、SPIを導入して教養試験や専門試験をなくしたり、そもそも筆記試験を全てなくした自治体もあります。
さきほどの区分ごとでみますと、
- 大学卒業程度 →教養試験、専門試験、論文試験、集団討論、個別面接、適性検査
- 短期大学卒業程度→教養試験、専門試験、論文試験、集団討論、個別面接、適性検査
- 高校卒業程度 →教養試験、作文試験、個別面接、適性検査
- 社会人経験者枠 →教養試験、集団討論、個別面接、適性検査
- 障害者枠 →教養試験、作文試験、個別面接、適性検査、(専門試験)
- 就職氷河期世代枠→教養試験、作文試験、個別面接、適性検査
がスタンダードです。(注意!自治体により差がありますので必ず自治体HPに掲載されている受験案内で確認を!)
大学卒業程度(上級試験)について
公務員試験は学歴は基本関係ありません。(免許資格職は除く)
ですが、大学卒業程度の試験は高校3年生や短期大学生は年齢制限があり受験できない場合がありますので注意しましょう。(自治体の受験案内要確認)
理系学部出身で大卒程度の行政職を受験することは可能ですし、文系学部で大卒程度の技術職を受験することは可能です。
年齢制限が幅広い
公務員試験は年齢制限が広いです。
自治体によりますが、大学卒業程度の試験も30歳や35歳の社会人が受験できます。
社会人枠や障害者枠ではなんと59歳までの人が受験できる自治体もあります。
社会人は年齢制限さえ満たしていれば、一般枠で大学生と一緒に受験してもいいし、社会人枠で受験しても大丈夫です。
ただし、社会人が一般枠で受験すると現役の大学生と競争するので筆記試験は不利になります。
その反面、面接試験は有利になるでしょう。
また高校卒業程度の試験を大学生や社会人が受験しても構いませんが、年齢制限を課している自治体が多いです。
ちなみに、小中学校事務職は高校卒業程度の試験となっていますが、年齢制限が緩和されていることが多く、例えば長野県では35歳まで受験可能です。
(自治体によっては、学校事務職を大卒程度と高卒程度に区分しているところがあります。)
都道府県職員の種類・職種(各都道府県人事委員会が試験実施)
募集職種や採用人数は各都道府県で差があります。
【都道府県職員の職種】
- 行政職
- 技術職
- 小中学校事務職
(警察職・教育職はのちほど解説します)
行政職
県庁、現地機関(地域振興局、県税事務所、保健福祉事務所、建設事務所など)、県立病院、教育委員会、高等学校などで働きます。
仕事内容は行政全般に関する企画立案・調査・連絡調整・相談業務・予算・経理・庶務・税金の賦課徴収・許認可等、ありとあらゆることをします。
異動は係員クラスだと約3~4年、係長以上クラスだと約1~2年ごとにあります。
そのたびに全く新しい部署に異動し、業務を一から覚える必要があり、異動後の4月5月6月あたりは精神的に中々ハードです。
国や市町村、民間などに出向する場合もあります。
各地の現地機関だけをぐるぐると異動したり、本庁(県庁)と現地機関を交互に異動したり、本庁内(県庁内)をぐるぐるする人もいます。
異動先の希望は11月頃に管理職と面談があり、ある程度聞いてはくれますが、理由(親の介護、子育て、病気など)がある人が優先されることが多いです。
技術職
デジタル、社会福祉、心理、化学、電気、機械、農業、水産、林業、総合土木、建築、薬剤師、保健師、管理栄養士、環境、司書などの多様な職種があります。
行政職と技術職は受験時の専門試験で内容に違いがあります(教養試験は共通)。
入庁してからの給料は基本的に同じで、行政のほうが立場が上ということはありません。
仕事内容は完全に専門分野のみで、行政職のように全く違う仕事に異動になるということは滅多にありません。
また、希望を出せば、技術職から行政職に移ることができます。(面接や条件などがあるみたいです)
【参考記事】【公務員】行政職と技術職の違い(仕事内容・給料・忙しさ・異動・出世・偉さ)
小中学校事務職
公立小中学校で事務(総務や経理など)を専門に行う職種です。
異動先は小中学校だけに限られます。
試験区分は高校卒業程度となっている場合が多いですが、年齢制限がゆるく、大学生や社会人の受験生もいます。
私は年齢制限ぎりぎりの34歳で受験し、県庁職員から小中学校事務職に転職、約1年務めました。
ちなみに、高等学校の事務は行政職の県職員が行います。
【参考記事】おすすめの公務員「学校事務」の試験の特徴!高倍率だけど専門試験がない。
政令指定都市、市町村職員の種類・職種
募集職種や採用人数は各政令指定都市・市町村で差があります。
【政令指定都市、市町村職員の職種】
- 行政職
- 技術職
- 現業職
行政職
都道府県職員に比べて、より住民の生活に直結する仕事が多く、住民の窓口的な仕事が多いです。
行政職は施策の企画・調整、予算編成、農業・商業・工業、文化、スポーツ振興、地域福祉、税、保険、年金や環境、戸籍等のしごとに従事します。
仕事内容が違うだけで都道府県と市町村どちらが上ということはありません。
試験内容等はほぼ都道府県職員と同様です。
給料については、自治体で差があり、都道府県職員よりも高い給料が支給されている市町村もあります。
異動も県職員と同様に数年後ごとにあり、県に出向することもあります。
技術職
技術職の種類は自治体によってかなり差があります。
職種としては、社会福祉、精神保健福祉士相談員、土木、水道、建築、電気、機械、農業、学芸員、林業、畜産、心理、消防士、保健師、保育士、小中学校事務、管理栄養士、化学、獣医師、臨床検査技師、情報処理、造園、衛生監視員、司書、栄養士、学校栄養職員、自動車検査技師などがあり、ほんとうに幅広いです。
小中学校事務職では県内に政令指定都市がある場合は、県と政令指定都市、それぞれで採用試験を行います。
この場合、県の小中学校事務職は政令指定都市を除く市町村を異動することになります。
現業職
現業職は国および地方公共団体の非権力的な業務の職のことをいいます。(ちょっと分かりづらいですね)
現業職の基準は自治体で違う場合があります。
例を挙げると、公用車の運転手、清掃作業員、学校用務員、給食調理員、守衛、学童クラブ職員などがあります。
警察職(各都道府県警察)
警察官
警察官は各都道府県で採用していて、採用試験は行政職と同じように大卒と高卒の区分があります。
試験には教養試験や専門試験のほかに、身体的条件や体力検査があります。
- 身体的条件:視力、色覚など
- 体力検査の例:20mシャトルラン、上体起こし、反復横とび、立ち幅跳び、握力など
柔道や剣道の経験がなくても全く問題ありません。
警察官として採用されると、まず警察学校に入校し、大卒は6ヶ月間、大卒以外は10ヶ月間、みっちり警察官に必要な基礎を教え込まれます。
警察学校を卒業後は原則として交番に配置となります。
警察官も警察行政も身分は地方公務員(県職員)です。
警察行政職
警察行政職は警察官とは全く異なります。
仕事内容は、警察業務に関する企画立案・調査・連絡調整・会計事務、庶務、広報、統計分析、情報システム管理などです。
大卒程度と高卒程度による仕事の区分はありません。
警察の行政職については、都道府県行政職と一緒に試験を行う場合と、警察本部が試験を行う場合があります。
警察行政職員には警察官のような体力検査はありませんし、身体的条件もありません。
採用後の警察学校についてですが、警察官のように長期に入校することはありませんが、警察官の教養を学ぶために短期的に警察学校に入校します。
(数週間程度~1ヶ月程度、自治体により違います)
警察技術職
警察の技術職として、少年警察補導員、科学捜査(化学、生物、電気)、サイバー犯罪捜査官、交通工学、航空操縦士など様々な専門職が採用されています。
ただし、職種や募集については各都道府県で違いがあり、基本的には欠員が生じた際に募集をかける自治体が多いようです。
教育職(各都道府県教育委員会)
公立学校教員
当然ですが教員として働くには教員免許が必要です。
ただし、教育学部を出ていなくて教員免許をもっていない社会人でも、今は通信制大学で教員免許を取得できます。
働きながら教員免許をとり、民間企業から小学校の先生などに転職する人もいます。
(ただ教育実習中はまとめて数週間休む必要があり、会社側との調整が難しいところです。)
教員は小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、教育委員会などで勤務します。
昨今、教員の競争倍率は低下傾向にありますが、自治体によってバラツキがあります。
例えば、高知県では9.2倍、東京都は3.7倍、秋田県・福岡県では1.3倍と差があります。(参考:文部科学省「令和4年度公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント」小学校の場合)
また、校種・教科によっても倍率は違い、小学校は2.8倍、中学で5.7倍、高校で6.9倍、地理・歴史や保健体育の倍率が国語・英語・算数より高い傾向にあります。
教員は大変な仕事ですが、なかでも教頭の忙しさは半端なものではありません。
担任を持つか持たないか、部活の顧問になるかならないか(自分の全く知らない部活の顧問はシンドイ)で、かなり仕事量に差がありました。
高等学校実習助手
意外と知られていませんが、教員免許を持っていなくても高校で理科、工業、農業などの実験・実習のサポートをする「実習助手」という職種があります。
サポートだけでなく、実際の校務分掌(生徒指導や進路相談や部活顧問など)にも携わっている実習助手もいます。
(部活動の引率は教員免許が必要なので実習助手ではできません。)
実習助手については、こちらの記事で解説しているので、よければご覧ください。
【参考記事】実習助手になれば教員免許がなくても学校で働けます!(採用試験体験談あり)
(参考)国立大学職員(地方公務員ではありません)
国立大学の職員は、以前は人事院が行う国家公務員採用試験で採用されていましたが、平成16年に国立大学が法人化したのに伴い、現在採用試験は国立大学法人等が合同で実施しています。
(たまに大学独自で採用試験を行う場合もあります。)
試験地区が分かれていて、北海道、東北、関東甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州の7つの地区から自分が働きたい国立大学がある地区で受験をします。
試験区分は事務、図書、技術(電気、機械、土木、建築、化学、物理、電子・情報、資源工学、農学、林学、生物・生命科学)があります。
年齢制限があり、30歳までの人しか受験できません。(各大学で行っている独自採用試験の場合は年齢制限が緩和されます)
国立大学法人等の合同採用試験で教養試験を受け、それに合格した人の中から入りたい国立大学採用試験の2次試験を受験します。
出身大学が採用に影響することは一切ありません。
仕事内容は教育・研究支援業務、地域連携、産学連携・知的財産などの社会連携、国際交流・留学生支援、総務、財務など大学の運営業務を幅広く行います。
【関連記事】公務員から国立大学職員へ転職!中途採用(独自採用)もあり!(ただし公務員ではない)
まとめ
ここまで地方公務員の職種について、ご紹介してきました。
地方公務員のそれぞれの職種には仕事内容に大きな違いがありますので、地方公務員を受験するにあたっては、よく吟味してください。
できれば現役公務員に直接会える説明会などに行って、どのような仕事をしているのか聞いてみることをおすすめします。
インターンを受け付けているところもありますが、完全にお客様扱いになるので、あまり業務を体験できずに終わることが多いと思いますが、やらないよりはマシですね。
私の県庁時代にもインターンの学生が来ましたが、業務をやらせるわけにもいかず、インターン生用に現場めぐりなどをしてもらっていました。
就職や転職をしたあとに、「こんなはずではなかった」とくれぐれもならないよう検討してくださいね。
受験資格はゆるゆるなので、30代、40代の人達でも十分採用されるチャンスはあります。
転職をお考えの方もぜひ地方公務員、選択肢の中にいれてみてください!
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