【元県職員が解説】地方初級(高卒)で公務員になると後悔する?大卒組との違いとリアルな現実

「高卒で公務員になった場合、大卒組と比べてどんな差があるの?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

実際に私は県庁職員として9年間勤務し、高卒採用の方とも多くの時間を共にしてきました。

その中で、高卒組と大卒組の待遇やキャリアに関する違いを強く感じる場面がいくつもありました。

今回はその実体験をもとに、「高卒程度(初級)で採用された場合に直面するデメリット」について解説します。

この記事では、

  • 初任給や昇給の違い

  • 昇進・キャリアパスの差

  • 配属部署の傾向

  • 職場内での見られ方や心理的なハードル

などを分かりやすくお伝えします。

もちろん、全てがネガティブなわけではありません。

「高卒だからこそ公務員に向いている」と感じる人もいるので、そのあたりも含めて整理していきます。

※この記事の内容は、私(元県庁職員)の経験談なので、他の自治体には当てはまらないこともあるのであらかじめご了承ください。

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高卒程度(初級)採用とは?

まず「高卒程度採用」とは、多くの自治体や国家公務員で実施されている高校卒業程度の学力があれば受験可能な試験区分のことです。

いわゆる「地方初級」「国家一般職(高卒程度)」などが該当します。

対象年齢は17歳〜21歳程度が一般的で、大学卒業者も受験自体は可能ですが、基本的には高卒・専門学校卒などを対象にした区分です。

大卒組(地方上級)と比べたデメリット5選

高卒程度で採用された場合、大卒組と比べて以下のような5つのデメリットがあります。

  1. デメリット1:初任給が低い
  2. デメリット2:昇格スピードが遅い
  3. デメリット3:管理職になりづらい
  4. デメリット4:「初級の人」というレッテルがつく
  5. デメリット5:配属部署・仕事内容に違いが出る

それではひとつずつ解説していきます。

1.初任給が低い

最大の違いのひとつが「給料面」です。

大卒組に比べて初任給に明確な差がありますがあり、高卒組は大卒組に比べて圧倒的に低いです

大卒組と高卒組とでは年齢差があるので、一概に低いとは言い切れない部分もありますが、数字だけでみると数万円の差があります。

さらに言えば、賞与(ボーナス)は基本給が元になるため、年単位で見れば数十万円の差になります。

【令和6年度新卒国家公務員の初任給】

  • 一般職(大卒) 196,200円
  • 一般職(高卒) 166,600円

(地域手当含まない場合)

(参考:国家公務員採用試験受験案内一覧

【参考記事↓】

国家公務員・地方公務員の初任給はどのくらい?民間と比べて安い?(大卒・高卒別)

伯爵さん
一見、数万円の差があるようにみえますが、毎年必ず昇給していくので、高卒組も22歳や23歳あたりになれば、大卒組と同じぐらいの給料にはなります

【参考記事↓】

公務員の給料は1年でどのくらい上がるの?昇給・昇任の仕組み(地方公務員)

2.昇格スピードが遅い

若いうちはあまり差がないように感じるかもしれませんが、30代後半〜40代になると大卒組との昇進スピードの差が明確になります。

例えば、

  • 大卒組:40代前半で係長、50歳前後で課長

  • 高卒組:40代後半や50代でようやく係長、課長にはなれない人も多い

というようなケースは珍しくありません。

昇任試験の有無やポストの空き状況にもよりますが、「同じ年数働いていても高卒組のほうがポジションが低い」ことが現実としてあります。

伯爵さん
高卒組の職員で、いかに大卒組よりも仕事ができたとしても、大卒組を追い越して出世していく人を私はみたことがありません
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3.管理職になりづらい

これも大きな壁の一つです。

私の経験上、高卒組で部長級(県職員の最高クラス)まで上がる人は見たことがありません

課長級で止まるケースが多く、それ以上のポストは基本的に大卒組が占めています。

仕事ができる・できないではなく、「初級採用」というラベル自体が、昇格のブレーキになってしまっているのです。

伯爵さん
逆に言えば、出世欲のない人・絶対管理職になりたくない人は、高卒組(地方初級)で入庁したほうがいいかもしれません

4.「初級の人」というレッテルがつく

これは精神的な負担として地味に重くのしかかります。

職場内で誰が初級で誰が上級か、口に出して言うことはなくても、周囲からの“見られ方”に差があるのは事実です。

大卒組が高圧的というわけではないのですが、高卒組の職員自身が劣等感を持ってしまうことも多く、自信を失ってしまう例も見てきました。

中には途中で大卒資格を取り直し、改めて大卒試験を受け直す人もいました。

5.配属部署・仕事内容に違いが出る

高卒組は比較的、「現地機関」や「事務的・定型業務」が多くなる傾向があります。

例:

  • 高卒組:窓口業務、高校事務、税務、地域機関の庶務

  • 大卒組:政策企画、観光戦略、国・民間出向、財政課など

もちろん例外もありますが、大卒組が“花形部署”に行く確率が高いのは間違いありません。

伯爵さん
ただし、高卒組でも有能な職員は難易度の高い仕事をこなしている方もなかにはいました

それでも高卒で公務員を目指す価値はある?

ここまで読んで「やっぱり高卒は不利なんだな」と感じた方も多いと思います。

でも、デメリットばかりではありません。

むしろ、

「早く働きたい」

「地元で安定して働きたい」

「管理職にはなりたくない」

などの思いがある人にとっては、高卒公務員という選択肢は非常に現実的で堅実な道です。

公務員の世界は“学歴より仕事の中身”が問われる時代へ

最近では、公務員の世界にも「業績評価制度(人事評価)」が本格的に導入されつつあります。

学歴だけでは評価されず、「どんな仕事をしたか」「どんな成果を出したか」で処遇が決まる時代に変わりつつあります。

高卒でも優秀な人は評価されるチャンスがあり、周囲からの信頼も得てキャリアアップしていく人もいます

まとめ:高卒でも公務員としてやっていけるか?

  • 初任給や昇進スピードなどで差はある

  • 管理職を目指すなら大卒の方が有利

  • でも仕事の現場では“学歴よりも人柄と能力”

  • 高卒だからこそ若いうちから経験を積める利点もある

つまり、「どんな人生を描きたいか」で選ぶべきです。

  • 出世したい、広い業務に挑戦したい → 大卒試験がおすすめ

  • 地元で長く働きたい、安定志向 → 高卒試験でも十分価値あり

 

大卒組と高卒組で様々な面で差があることがわかりましたが、いざ仕事となると、学歴は全く関係ありません

住民からみたら、公務員はみな同じ公務員です。

大卒組でもポンコツの人は多数いますし、逆に高卒組でかなり仕事ができる人もいるのは確かです。

仕事中は、学歴については皆一切を忘れて業務に取り掛かっていますし、事務分担に大きな差もありません。

なのに、給与面や出世面などになると途端に、高卒組は立場が弱くなります

これからは能力主義の時代で、公務員も業績評価制度が導入されているので、高卒組でも結果を残せば待遇がよくなる可能性もありますので、期待したいところです。

 

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