近年、公務員試験では、ほとんどの自治体が「社会人枠(民間企業等職務経験者枠)」を設けるようになり、社会人や民間経験者が公務員へ転職できる門戸が大きく広がっています。
特に、自治体によっては年齢上限を50代後半(例:59歳)まで引き上げているケースも増加しており、幅広い年代の社会人が受験できる状況になっています。
こうした背景から、会社員・フリーランス・他自治体の公務員・無職の方など、さまざまなキャリアを持つ人が公務員を目指すケースが急増。
その結果、社会人枠の採用試験は年々人気が高まり、倍率・難易度ともに上昇傾向にあります。
本記事では、最新(2024年度)の都道府県別・政令指定都市別の社会人枠(民間経験者枠)の競争倍率データを分かりやすく紹介します。
社会人から公務員転職を目指す方が、「どの自治体の社会人枠が狙い目なのか」「合格の難易度はどれくらいか」といった点を具体的にイメージできるよう、網羅的な比較データを掲載しています。
※なお、今回の記事では、就職氷河期世代枠試験は除外しています(民間企業等の経験年数が必要な試験のみ紹介)。
【この記事を読むと分かること】
公務員試験「社会人枠(民間経験者枠)」の最新トレンドと特徴
都道府県・政令指定都市ごとの倍率データと難易度比較
これから社会人枠を目指す人への具体的なアドバイスと勉強法
- 都道府県は10倍
- 政令指定都市は12倍
【この記事を書いた人↓】
社会人枠(民間経験者枠)の特徴と最新倍率データ
社会人枠とは?|一般枠との違い・受験資格の広がり
従来、公務員試験は「新卒や第二新卒など、若年層向け」が主流でしたが、近年は社会人・民間経験者が応募できる「社会人枠(民間企業等職務経験者枠)」が大幅に拡充されています。
この社会人枠は、「一定年数以上の民間企業等での職務経験」が応募要件となっているのが特徴です。
年齢制限も、30代後半~50代、場合によっては59歳まで受験できる自治体も多く、長く民間企業等で働いてきた方にも広く門戸が開かれています。
【ポイント】
会社員、フリーランス、他自治体の公務員、無職の方など多数受験
キャリアチェンジ・Uターン転職・地元志向の高まりにより志願者が増加中
一部自治体では、職歴不問の「社会人枠」も実施
社会人枠の主な受験区分
公務員の社会人採用試験は、各自治体ごとに細かく制度設計されていますが、大きく分けると以下の2つのタイプがあります。
① 民間経験者社会人枠(今回メインで紹介)
一定年数以上の民間企業等での職務経験が必須
30代~50代、自治体によっては59歳まで応募可能な場合も
志望動機や職務経験、課題解決力などが重視される
今回、当記事で紹介しているのはこのタイプ
② 職歴不問の社会人枠(未経験OK)
民間経験がなくても、社会人や既卒者であれば受験できる
フリーター・主婦(夫)・未経験者にも門戸が開かれている
試験内容や倍率は自治体によって大きく異なる
志望タイプの選び方・戦略アドバイス
民間経験が豊富な方は「民間経験者枠」が最もチャンス大
職歴に自信がない場合やフリーター経験のみの方は、「職歴不問の社会人枠」や「氷河期世代枠」も選択肢
倍率は年々高まり難化傾向!政令指定都市は特に高倍率
社会人枠の人気は非常に高く、倍率・難易度ともに上昇傾向が続いています。
特に政令指定都市では、「一般枠よりも社会人枠のほうが倍率が高い」ケースが珍しくありません。
【2024年度・最新の平均競争倍率】
都道府県:平均10倍
政令指定都市:平均12倍
この数字は、数年前(例:令和4年度13.5倍、令和5年度11.5倍)よりもやや減少傾向にはあるものの、依然として高倍率であることに変わりありません。
都道府県別|社会人枠(民間経験者枠)の競争倍率データ【2024年度最新版】
ここでは、2024年度に実施された都道府県ごとの社会人枠(民間企業等職務経験者枠・行政職)の競争倍率データを、最新の公式発表・自治体データをもとに分かりやすく掲載します。
受験を検討している方は、ご自身の志望自治体や近隣エリアの倍率をチェックし、戦略的な受験計画に活用してください。
※本データはあくまで行政職(民間経験必須枠)のみとなります。技術職・専門職や、職歴不問の枠、就職氷河期世代枠などは含みませんのでご注意ください。
【都道府県別】社会人枠・行政職(民間経験者)の受験倍率一覧
都道府県 | 受験者数 | 合格者数 | 競争倍率 |
---|---|---|---|
北海道 | 323 | 82 | 3.9 |
青森県 | 38 | 4 | 9.5 |
岩手県 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
宮城県 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
秋田県 | 68 | 15 | 4.5 |
山形県 | 8 | 1 | 8.0 |
福島県 | 118 | 15 | 7.9 |
茨城県 | 171 | 13 | 11.7 |
栃木県 | 123 | 21 | 5.9 |
群馬県 | 217 | 16 | 13.6 |
埼玉県 | 81 | 9 | 9.0 |
千葉県 | 260 | 45 | 5.8 |
東京都 | 職種が複数(詳細は受験案内を確認) | ||
神奈川県 | 826 | 90 | 9.2 |
新潟県 | 職種が複数(詳細は受験案内を確認) | ||
富山県 | 14 | 10 | 1.4 |
石川県 | 40 | 9 | 4.4 |
福井県 | 移住・定住促進枠のみ | ||
山梨県 | 59 | 14 | 4.2 |
長野県(第1回) | 116 | 31 | 3.7 |
長野県(第2回) | 89 | 21 | 4.2 |
長野県(3回目) | 62 | 13 | 4.8 |
岐阜県 | 92 | 20 | 4.6 |
静岡県 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
愛知県(4月募集) | 289 | 13 | 22.2 |
愛知県(7月募集) | 237 | 38 | 6.2 |
三重県 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
滋賀県 | 156 | 29 | 5.4 |
京都府 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
大阪府(26~34歳) | 216 | 102 | 2.1 |
大阪府(35~49歳) | 289 | 22 | 13.1 |
兵庫県 | データ確認できず | ||
奈良県 | 180 | 8 | 22.5 |
和歌山県 | 81 | 36 | 6.2 |
鳥取県 | 136 | 8 | 17.0 |
島根県 | 85 | 14 | 6.1 |
岡山県 | 131 | 18 | 7.3 |
広島県(第1回) | 151 | 15 | 10.1 |
広島県(第2回) | 157 | 11 | 14.3 |
山口県 | 131 | 2 | 65.5 |
徳島県 | 86 | 38 | 2.3 |
香川県 | 109 | 8 | 13.6 |
愛媛県 | 52 | 15 | 3.6 |
高知県 | 170 | 16 | 10.6 |
福岡県 | 710 | 56 | 12.7 |
佐賀県 | 210 | 19 | 11.1 |
長崎県 | 52 | 7 | 7.4 |
熊本県 | 145 | 10 | 14.5 |
大分県(1回目) | 272 | 15 | 18.1 |
大分県(2回目) | 193 | 8 | 24.1 |
宮崎県(春試験) | 47 | 10 | 4.7 |
宮崎県(秋試験) | 43 | 14 | 3.1 |
鹿児島県 | 70 | 26 | 2.7 |
沖縄県 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない |
データから読み解く「狙い目」と難易度のポイント
【倍率トップ・ワーストランキング(2024年)】
高倍率:山口県(65.5倍)、大分県(24.1倍)、奈良県(22.5倍)
低倍率:富山県(1.4倍)、大阪府(2.1倍)、徳島県(2.3倍)
倍率が10倍超となっている自治体が多い一方、一桁台の比較的狙いやすい自治体も存在します。
また、同じ県でも試験回ごとに倍率や募集数が大きく変動することがあるため、最新の募集要項や受験案内を必ずチェックしましょう。
【全体傾向まとめ】
都道府県社会人枠(民間経験者枠)の2024年度「平均競争倍率」は約10倍
直近数年(令和4年度13.5倍、令和5年度11.5倍)と比較し、倍率はやや減少傾向
ただし一部自治体では20倍超の高倍率も見られ、依然として「難関」といえる状況
政令指定都市別|社会人枠(民間経験者枠)の競争倍率データ【2024年度】
地方自治体だけでなく、政令指定都市(大都市市役所)でも社会人枠(民間経験者枠)の採用試験が幅広く実施されています。
大都市は採用人数も多い一方で、都市部の人気や受験者集中によって倍率は非常に高くなる傾向があります。
【政令指定都市別】社会人枠・行政職(民間経験者枠)の受験倍率一覧
都市名 | 受験者数 | 合格者数 | 競争倍率 |
---|---|---|---|
大阪市(事務行政26-34歳) | 社会人経験不問なので除外 | ||
名古屋市 | 402 | 67 | 6.0 |
京都市 | 367 | 56 | 6.6 |
横浜市 | 732 | 43 | 17.0 |
神戸市(Aターム) | 165 | 16 | 10.3 |
神戸市(Bターム) | 158 | 19 | 3.7 |
神戸市(Cターム) | 244 | 26 | 9.4 |
神戸市(Dターム) | 229 | 28 | 8.2 |
北九州市 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
札幌市 | 624 | 29 | 21.5 |
川崎市 | 280 | 15 | 18.7 |
福岡市 | 787 | 21 | 37.5 |
広島市 | 142 | 26 | 5.5 |
仙台市 | 493 | 52 | 9.5 |
千葉市 | 189 | 17 | 11.1 |
さいたま市 | 317 | 15 | 21.1 |
静岡市 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
堺市 | 219 | 45 | 4.9 |
新潟市 | 136 | 17 | 8.0 |
浜松市 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
岡山市 | 社会人枠(民間経験者枠)での行政職は募集していない | ||
相模原市 | 205 | 58 | 3.5 |
熊本市 | 227 | 18 | 12.6 |
データから分かる!政令指定都市の倍率と難易度
【倍率トップ・ワーストランキング(2024年)】
高倍率:福岡市(37.5倍)、札幌市(21.5倍)、さいたま市(21.1倍)
低倍率:相模原市(3.5倍)、堺市(4.9倍)、広島市(5.5倍)
全体の平均競争倍率は約12倍。
都道府県よりもやや高く、特に福岡・札幌・首都圏の政令市では20倍を超える高倍率も多いため、都市部志望の方はしっかりとした対策・併願戦略が必須です。
社会人が公務員試験に合格するための勉強法と対策のポイント
社会人が直面しやすい課題と現実
社会人から公務員試験に挑戦する場合、最大の壁となるのが「限られた時間の中でいかに効率的に勉強を進めるか」という点です。
フルタイム勤務や家事・育児をしながら勉強時間を確保する必要がある
ブランクがあり、基礎学力や勉強習慣が不安な人も多い
一発勝負になることも多く、短期間での合格を目指す「戦略的な学習」が必須
社会人枠対策の鉄則|効率と独学・通信教育の活用がカギ
1. 学習計画を必ず立てる
忙しい社会人こそ、最初に「いつ・どの科目を・どれだけ勉強するか」を逆算したスケジュール設計が重要です。
短期集中型でも、毎日少しずつでも継続できる仕組み作りが合格への近道です。
2. 独学 or 通信講座で効率化
予備校・通学型は時間的に難しい人が大半
独学やWeb通信講座をフル活用し、スキマ時間を最大限活かす学習スタイルがおすすめです
(近年はオンライン教材・映像講義・スマホ学習ツールも充実)
3. 出題傾向の徹底分析&過去問重視
「何をどこまでやれば合格できるか」の科目ごとの出題傾向・配点・合格点を必ず事前にリサーチ
過去問演習を繰り返すことが最短ルート。苦手科目は重点的に補強
4. SPI導入や試験内容変更に注意
最近は筆記試験の一部でSPI(民間型適性検査)を導入したり、筆記自体を廃止する自治体も増えています
必ず受験案内・自治体HPで最新の試験内容を確認しましょう
具体的な勉強方法などについては、以下の記事でまとめてありますので良ければご覧ください。
【公務員への転職】社会人が受験できる試験は3タイプ。試験別メリット・デメリットと働きながらの勉強法。(独学、通信教育、Web通信)
それと公務員への転職に興味がある方は、
「社会人のための公務員転職ハンドブック(無料)」
が役立ちます。
(資格スクールで有名なクレアール が無料発行しています。2023年度公務員試験合格者実人数313人)
この本が気になる方は下記のリンク(クレアールHP)より請求してください。
まとめ|社会人枠のチャンスは拡大中!ただし難易度・倍率は年々上昇
社会人枠はほとんどの自治体で実施、転職希望者にとって大きなチャンス
2020年度以降、全国的に多様な枠が加わり、民間経験者やフリーランスや無職の方が公務員へ転職できる道は大きく広がっています。
年齢や職歴の条件もゆるやかになってきているため、フリーター・主婦(夫)・非正規雇用などさまざまなバックグラウンドの方にもチャンスが増えています。
倍率は高水準!事前リサーチと計画的な対策が必須
全国ほぼすべての自治体で社会人枠は実施されていますが、実際の倍率は10倍~20倍超えも珍しくありません。
都市部だけでなく、地方でも毎年高倍率が続いており、しっかりとした情報収集・併願戦略・勉強計画が不可欠です。
地域によっては、同じ県・市でも年度や試験回ごとに倍率や合格者数が大きく変動しますので、必ず直近の受験案内・公式発表データを確認してください。
受験申し込み・試験の流れについて
公務員試験は受験料がかからず、一次試験は休日に実施される場合がほとんどです。
申込者数は受験者数よりも多いのが一般的で、「とりあえず申込だけして当日受験しない」という方も少なくありません。
受験を迷っている場合も、まずは締切前に申込を済ませておき、後から本当に受験するか決めることも可能です。(辞退連絡は特に不要な自治体が多いです)
社会人枠を目指す方へのエール
「社会人枠の公務員試験」は、決して簡単ではありませんが、“人生をリスタートしたい” “安定したキャリアを築きたい”という方にとっては強力な選択肢です。
民間で積み上げた経験・スキルは必ず公務員の現場でも活きます。
年齢やこれまでのキャリアを気にせず、一歩踏み出してみることが大切です。
【参考記事↓】