ここ数年で「精神障害者」の雇用を取り巻く環境は非常に良くなってきました。
そのきっかけは、平成30年4月1日から障害者雇用義務の対象とし精神障害者が加わり、すべての事業主は「精神障害者」を雇用する義務が生じたことでした。
(従業員を43.5人以上雇用している事業主は障害者を1人以上雇用しなければなりません)
また、併せて法定雇用率も見直され、雇用率は増加しました。
- 障害者枠の試験内容
- 障害者枠のボーダーライン
- 障害者採用者の待遇
- 障害者採用者の仕事内容
- 公務員以外の働き方
【2023年度】都道府県別の障害者採用者数&競争倍率&一次試験日一覧
それでは2023年度都道府県別の障害者枠採用者数、競争倍率、一次試験日を紹介します。
- 北海道 一般行政10人、教育行政2人、警察行政1人、小中学校事務2人(7.2倍)2023年10月15日
- 青森県 一般・教育事務5人(4.6倍)2023年10月15日
- 秋田県 一般事務2人(2倍)、教育事務1人(6倍)、警察事務1人(予定)2023年10月22日
- 岩手県 一般事務4人(7倍)2023年10月22日
- 山形県 行政2人(10.5倍)2023年9月24日
- 宮城県 警察事務短大卒程度1人(1.0倍)、一般事務高卒程度1人(10.0倍)2023年10月22日
- 福島県 行政事務6人、学校事務1人 2023年10月23日
- 茨城県 行政事務5人 2023年10月22日
- 栃木県 行政3人(7.7倍)2023年10月22日
- 群馬県 行政事務2人(9倍)、学校事務1人(16倍)、警察事務1人(3倍)2023年9月17日
- 埼玉県 一般事務25人(6倍)、警察事務1人(13倍)2023年10月15日
- 千葉県 一般行政11人(3.9倍)、警察事務1人(2倍)2023年10月15日
- 東京都 事務48人(4.5倍)2023年9月10日
- 神奈川県 行政12人(18.8倍)、警察事務5人(16.4倍)2023年9月17日
- 新潟県 一般事務3人(9.3倍)、学校事務1人(4倍)2023年10月22日
- 富山県 一般事務1人(6.0倍)2023年10月22日
- 石川県 行政4人(7倍)2023年10月22日
- 福井県 行政3人(7倍)、警察行政2人(3倍)、学校事務1人(3倍)2023年10月22日
- 長野県 県職員12人(4.7倍)2023年10月22日
- 岐阜県 行政4人(2.5倍)、事務2人(1.5倍)2023年10月22日
- 山梨県 行政2人(8倍)、警察行政1人(2倍)2023年9月24日
- 静岡県 行政4人、学校事務1人、警察行政1人(4.2倍)2023年9月22日
- 愛知県 県職員事務9人(12.4倍)、警察事務3人(5倍)、学校事務1人(9倍)他 2023年10月15日
- 三重県 一般事務4人(2.8倍)、一般事務特別枠1人(15倍)、警察事務1人(4倍)、学校事務1人(8倍)2023年10月22日
- 滋賀県 一般事務3人(5.3倍)、警察事務1人(2倍)、学校事務2人(3.5倍)2023年10月22日
- 京都府 事務13人(6倍)2023年9月17日
- 大阪府 事務5人(12.4倍)2023年9月24日
- 兵庫県 一般事務職・警察事務職・教育事務職・小中学校事務職8人(11倍)2023年10月22日
- 奈良県 総合職1人(10倍)2023年10月22日
- 和歌山県 一般事務3人(5.7倍)、学校事務1人(3倍)、警察事務1人(6倍)2023年10月29日
- 鳥取県 事務精神1人(11倍)2023年10月22日
- 島根県 一般事務身体1人(2倍)、精神1人(5倍)、警察事務1人(2倍)2023年10月22日
- 岡山県 学校事務1人(1倍)2023年10月22日
- 広島県 一般事務身体2人(3.5倍)、一般事務精神1人(15倍)2023年10月22日
- 山口県 事務3人、学校事務1人(倍率8.3倍)2023年10月22日
- 徳島県 一般事務2人(12倍)、学校事務1人(4倍)、警察事務1人(2倍)2023年10月22日
- 香川県 一般事務1人(10倍)2023年10月22日
- 愛媛県 一般事務3人(6.3倍)2023年10月22日
- 高知県 行政4人(4倍)、教育事務1人(1倍)2023年10月22日
- 福岡県 行政8人(5.1倍)、教育行政1人(5倍)、警察行政1人(6倍)2023年10月22日
- 佐賀県 第1回行政大卒身体2人(1倍)、第1回行政大卒精神2人(2倍)、第1回警察事務大卒身体1人(1倍)他 2023年6月25日
- 長崎県 一般事務5人(4.2倍)、警察事務1人(5倍)2023年10月15日
- 熊本県 一般事務3人(3.7倍)、教育事務1人(10倍)2023年10月22日
- 大分県 行政大卒2人(6倍)、教育事務大卒1人(10倍)、警察事務大卒1人(2倍)2023年10月15日
- 宮崎県 一般事務4人(1.8倍)、警察事務1人(5倍)2023年9月24日
- 鹿児島県 一般事務5人(4倍)、警察事務1人(6倍)2023年10月22日
- 沖縄県 一般事務9人(3.8倍)2023年10月15日
掲載データは2024年2月26日時点。倍率は最終倍率(受験者/合格者)。採用があった区分のみ掲載。
調査した結果、2023年度は全ての都道府県で障害者を募集・採用していました。(採用者の障害内訳は公表している自治体としていない自治体があり)
競争倍率は1倍~18.8倍となっていて、自治体によって大きく難易度が異なることが分かりました。
障害者枠公務員試験の内容
それでは、障害者枠公務員試験の内容について解説していきます。
一般枠の公務員試験とは違う部分もありますので注意してください。
受験資格
まずは受験資格についてです。
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
障害者枠で受験するためには、「精神障害者保険福祉手帳」を交付されている必要があります。
うつ病等で通院していたり、過去に精神疾患の既往歴があるだけでは受験はできません。
【精神障害者保健福祉手帳】
精神疾患により長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある人を対象としています。申請は市町村窓口で行い、その際に「診断書」が必要となります。精神科に長期に通院している人は、医者に頼めば診断書を書いてもらえると思います。
なお、試験当日において手帳を交付されていることが条件です。
交付申請中では受験できませんのでご注意ください。
(※都道府県によっては、手帳を交付される見込者も含まれる場合があり、その際は2次試験には必ず手帳が必要になります)
年齢制限
各都道府県で年齢制限が設けられています。
都道府県によっては58歳までを対象としているところもあります。
【年齢制限例】(2023年度試験の場合)
- 東京都 昭和38年4月2日~平成18年4月1日生まれの人
- 神奈川県 昭和38年4月2日~平成18年4月1日生まれの人
- 大阪府 昭和38年4月2日~平成18年4月1日生まれの人
- 静岡県 昭和63年4月2日~平成18年4月1日生まれの人
学歴
公務員試験には学歴は一切関係ありません。
年齢制限さえ満たしていれば、高卒の人が大卒レベルの試験を受験しても良いし、大卒の人や社会人が高卒レベルの試験を受験することも可能です。
(自治体によっては制限しているところもありますので注意)
居住地
都道府県によっては、県内居住している人限定としているところもありますので、受験する際は事前に受験案内でよく確認しましょう。
(通学等のため一時的に県外に居住している者を含む)
その他
都道府県によっては、
- 自力により通勤が可能な人
- 通常の勤務時間に対応できる人
という条件も付している自治体があります。
試験内容
障害者の公務員試験は、基本的に、教養試験+作文試験+個別面接1回です。
(自治体によって異なる)
【試験内容例】(2023年度の場合)
- 東京都 教養試験と作文試験と個別面接2回
- 神奈川県 教養試験と作文試験と集団討論と個別面接1回
- 静岡県 教養試験と作文試験と適性検査と集団討論と個別面接
- 大阪府 教養試験と作文試験とグループワークと個別面接2回
公務員試験障害者枠一次試験の平均点とボーダーライン(合格者最低得点)
参考までに、高知県と愛媛県と大分県と千葉市の2023年度障害者枠一次試験(筆記試験)の平均点と合格ライン(合格者最低得点)をご紹介します。
(自治体によって大きく異なります)
高知県
試験区分 | 平均点(満点150点) | 合格者最低得点(満点150点) |
---|---|---|
行政 | 70点 | 49.44点(得点率約33%) |
(引用:高知県職員採用HP)
愛媛県
試験区分 | 平均点(満点40点) | 合格者最低得点(満点40点) |
---|---|---|
一般事務 | 19.7点 | 20点(得点率50%) |
(引用:愛媛県職員採用HP)
大分県
試験区分 | 平均点(満点160点) | 合格者最低得点(満点160点) |
---|---|---|
行政 | 97.3点 | 84点(得点率約53%) |
(引用:大分県職員採用HP)
千葉市
試験区分 | 合格者最低得点(満点50点) |
---|---|
事務 | 31.67点(得点率約63%) |
(引用:千葉市職員採用HP)
上表のとおり、一次試験の合格ラインの得点率は
高知県:33%
愛媛県:50%
熊本県:53%
千葉市:63%
でした。
障害者枠採用者の待遇・仕事内容
続いて、障害者枠で採用になった場合の待遇と仕事内容について紹介します。
待遇
基本的に障害者枠採用でも一般職採用と給与などの待遇面は変わらず、昇任についても学歴等に関係なく能力・業績主義になっています。
障害者枠採用者の初任給
【令和5年度初任給(地域手当含む)】
- 東京都 高卒182,600円
- 神奈川県 高卒178,000円
- 静岡県 高卒167,800円、大卒195,600円
- 大阪府 高卒176,000円、大卒205,900円
※上記の初任給は高卒ですぐに採用された場合の数値です。大卒の方や社会人経験者が合格すれば、年齢や職歴に応じた給与になります。
手当
- 地域手当
- 扶養手当
- 通勤手当
- 住居手当
- 特殊勤務手当
- 期末勤勉手当(ボーナス)
- 時間外勤務手当(残業代)
など、一般職と全く変わりなく支給されます。
仕事内容
障害者枠といえども、基本的に他の職員と同様の仕事を行います。
ただし、勤務する上での配慮を試験時にあらかじめ申し出ることができ、都道府県によっては就労支援機関などの職員の同席を認めているところもあります。
例えば、静岡県では障害者枠の仕事については以下のとおり言及しています。
面接時に職場で配慮してほしい点についてはっきりと伝えないと、採用後に自分にとっても、職場側にとってもマイナスでしかありません。
ただし、東京都は障害者に配慮した仕事内容となっています。
その分、東京都の障害者枠採用者の給料は他県の障害者枠採用者にくらべて安いですが、、、。
勉強法・面接対策・経験談の参考記事
教養試験の勉強法、面接対策、経験談については以下の記事にまとめてありますので良ければご参考にしてください。
- 【公務員試験障害者枠】試験難易度と合格者の教養試験対策を紹介(経験談)
- 【公務員試験障害者枠】面接の対策方法と本番面接での質問内容(経験談)
- 【公務員試験(教養試験)】合格できる人の独学の方法9選(教養の勉強は独学で十分)
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試験勉強が苦手な方へ(民間企業への就職・転職も今がチャンス)
精神障害者の中には、試験勉強がネックとなっている人も多いと思います。
そういう方は民間企業への就職・転職がメインになるかと思います。
最初に説明しましたが、すべての事業者に精神障害者を雇用する義務が生じ、法定雇用率があがったことから、障害者の就職・転職は今がチャンスです。
- 障害者だからもう就職は無理
- 今の会社は障害に理解がなく大変な日々を過ごしている
- うまく就職活動できる自信がない
- 就職活動中に障害をオープンかクローズするか悩んでいる
- 障害者就労のサポートを受けたい
という人達は「障害者に特化した求人紹介を行っている企業」などを利用したほうが効率的に障害者でも働きやすい企業を紹介してもらえます。
参考までに、いくつか大手の障害者専用の求人紹介企業を掲載しておきます。
それでもどうしても働けないという人は、「障害年金」を受給しながら暮らしていくことも考えられます。
認定されれば、等級などにもよりますが、月5万円や10万円程度を給付してもらえます。
また、会社勤めは厳しいけど、在宅なら大丈夫という人もいると思います。
参考に、個人で稼ぐ方法もまとめた記事がありますので、もしよければお読みください☆