この記事では、公務員試験の地方上級について、元公務員(地方上級・県職員)が紹介します。
おもに、
- 公務員試験に興味があって、一から調べ始めた人
- 大学生の受験生
- 上級と初級の違いを知りたい人
など向けの記事となります。
この記事を書いた人
地方上級とは?
地方上級とは、「地方公務員試験で大卒程度の人が受験する一番難しい試験区分」のことをいいます。
地方公務員の試験には、「上級」「中級」「初級」があります。
それぞれの試験レベルは、
- 上級 → 大卒程度
- 中級 → 短大卒程度
- 初級 → 高卒程度
となっています。
ただし、公務員試験は基本的に学歴が関係ない試験です(学歴不問)。
上級・初級の違いは、どの地方公務員試験(都道府県・特別区・政令指定都市・市町村)にもあります。
地方上級で合格すると、将来の管理職候補として県庁などを中心に公務員として働くことになります。
もちろん、地方上級でも現地機関で働く人もいますし、逆に地方初級で県庁で働く人もいます。
ただ、県職員でいえば、地方初級の人は現地機関に配属されることが多いです。
【地方公務員(行政職)の仕事内容↓】
行政全般にわたり、運営管理に関する業務を行います。具体的には、福祉・保健医療、教育・文化、産業・労働・経済、環境、都市づくりなどの事業に関する総合的な企画調整、人事・財務管理など、さまざまな業務に携わります。
(引用:東京都職員採用HP)
地方上級試験の特徴
地方公務員試験の上級試験では、
- 筆記試験(教養試験+専門試験)
- 論文試験
- 面接試験(個別面接+グループディスカッション)
を受ける必要があります。
【関連記事↓】
【公務員試験】SPI3・SCOAで受験できる都道府県&大都市(地方上級・行政職)
筆記試験の科目ですが、例えば神奈川県の行政職の場合は、
教養試験 (試験時間2時間) | 専門試験 (試験時間2時間、40問選択解答) | |
---|---|---|
一般知識(18問選択解答) | 一般知能(22問必須回答) | |
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(参考:令和5年度神奈川県職員採用試験のお知らせ)
地方上級の試験難易度(ボーダーライン)
地方上級の試験難易度として、「ボーダーライン」※を紹介します。
※ボーダーラインは、HPで確認できた北海道、長野県、愛媛県、高知県、徳島県、熊本県、佐賀県、大分県、沖縄県、千葉市の数値です。
【ボーダーライン】(行政職)
- 筆記試験(教養試験+専門試験) → 約44%~約55%
- 面接試験 → 51%~71%(面接試験受験者のうち、だいたい半分以上の受験生が合格)
【参考記事↓】
公務員試験(教養・専門・面接)の平均点やボーダーライン(合格者最低点)はどのくらい?
地方上級の勉強方法
地方上級の勉強方法としては、
- 独学
- 予備校(通信講座)
- 予備校(通学)
- 大学生協の公務員講座(大学内)
などが考えられます。
どの勉強方法にもメリット・デメリットがありますので、お金と相談しながら自分に適したものを選んでください。
【地方上級の勉強方法別メリット・デメリット比較表】
勉強法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
独学 |
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予備校(通信講座) |
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予備校(通学) |
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大学生協の公務員講座(大学内) |
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具体的な独学の方法やおすすめの予備校は、下記の記事を参考にしてください。
- 公務員試験独学受験生必見!最新のおすすめ参考書10選(教養試験・大卒程度)
- 【公務員試験(教養試験)】合格できる人の独学の方法9選(教養の勉強は独学で十分)
- 【公務員予備校11社比較】もう迷わない!おすすめ「通信講座」はズバリここ!(元県職員監修)
- 【費用無料】公務員予備校選びに迷う人は内定特典で決める(コスパ最強)
地方上級の給与
地方上級の給与ですが、初任給とモデルケースを紹介します。
初任給
地方公務員(大卒)の初任給の平均は以下のとおりです。
- 都道府県 → 187,686円
- 政令指定都市 → 183,307円
- 市 → 184,552円
- 町村 → 182,414円
(参考データ:令和4年地方公務員給与の実態(総務省)の第4表初任給の一般行政職から抜粋)
給与モデルケース
ここでは滋賀県職員のモデル給与例を参考に紹介します。
(地方上級採用者、基本給、扶養手当、管理職手当、地域手当を基礎に算出)
職階 | 年齢 | 扶養親族 | 月額給与 | 年間給与 |
---|---|---|---|---|
主事 | 25 | 独身 | 218,999円 | 3,570,000円 |
主任主事 | 30 | 配偶者 | 267,606円 | 4,338,000円 |
主査 | 35 | 配偶者、子一人 | 319,968円 | 5,244,000円 |
係長 | 40 | 配偶者、子二人 | 362,566円 | 5,934,000円 |
主幹 | 45 | 配偶者、子二人 | 414,607円 | 6,877,000円 |
課長補佐 | 50 | 配偶者、子二人 | 445,616円 | 7,384,000円 |
課長 | ー | 配偶者、子二人 | 575,128円 | 9,245,000円 |
部長 | ー | 配偶者 | 685,647円 | 11,536,000円 |
(出典:「滋賀県職員モデル給与例(行政職職員)」)
自治体で差はありますので、あくまで参考数値としてください。
公務員の給与ですが、一言でいうと「若い時は安月給で、管理職になればそれなりになる」といった感じです。
【参考記事↓】
地方上級と地方初級との違い(給与・出世など)
地方上級と地方初級では給与・昇給・出世・福利厚生でどのような違いがあるのか紹介します。
給与・昇給
お金の面では、上級と初級では初任給に差が出ます。
ただし、上級で入るのは大学4年生、初級で入るのは高校3年生が多いので、年齢に差(22歳と18歳)があるので、給料(初任給)に差が出て当たり前です。
例えば、愛知県の初任給(地域手当を含む)をみると、
- 地方上級(大卒程度) → 一般行政職の場合 約224,900円
- 地方初級(高卒程度) → 事務職の場合 約189,800円
(参考:2024年度愛知県職員採用候補者試験受験案内(大卒程度)、2024年度愛知県職員採用候補者試験(高卒程度))
と、35,400円の差がありますが、だいたい年に4,000~8,000円昇給(私の県の場合)していたので、4年後には差は縮まります。
1年で上がる昇給については、上級と初級でほぼ差はありません。
参考に学歴別(大学卒・高校卒)の年齢別平均給与月額(一般行政職)を以下に示します。
(大学卒は地方上級、高校卒は地方初級とみなしていいと思います)
年齢 | 大学卒 | 高校卒 | 差 |
---|---|---|---|
18・19 | ー | 181,099円 | ー |
20~23 | 236,017円 | 216,509円 | 19,508円 |
24~27 | 277,467円 | 255,974円 | 21,493円 |
28~31 | 312,577円 | 288,516円 | 24,061円 |
32~35 | 347,361円 | 325,781円 | 21,580円 |
36~39 | 391,555円 | 371,650円 | 19,905円 |
40~43 | 438,516円 | 415,266円 | 23,250円 |
44~47 | 468,342円 | 448,978円 | 19,364円 |
48~51 | 490,888円 | 465,951円 | 24,937円 |
52~55 | 508,115円 | 477,609円 | 30,506円 |
56~59 | 525,139円 | 484,610円 | 40,529円 |
(参考:令和4年4月1日地方公務員給与実態調査結果第2統計表Ⅰ第7表の2)
出世
出世については、上級と初級とでははっきりと差がでます。
大卒組の中でも偏差値の高い大学とそうではない大学で出世スピードに差が出てくるので、高卒組はそもそも出世ルートに乗ることがほぼないのが実情です。
私の9年間の県職員時代で公務員で上がれる最高クラスの部長まで上り詰めた人達は、
- 東大出身者
- 京大出身者
- 有名大学で仕事がめっちゃデキる人
でした。
福利厚生
福利厚生は上級も初級も全く同じです。
手当、休暇の種類、休暇日数、職員宿舎など差は一切ありません。
【関連記事↓】
【公務員】高卒程度(地方初級)で採用された場合のデメリット5選
行政職と技術職の違い
地方上級職は、行政職と技術職に大きく区分されます。
文系の学生は行政職、理系の学生は技術職になるのが一般的です。
入庁後については、どちらの職も給料は全く同じです。
忙しさは、行政職・技術職関係なく部署によります。
【関連記事↓】
【公務員】行政職と技術職の違い(仕事内容・給料・忙しさ・異動・出世・偉さ)
県庁と現地機関の違い
地方上級で入庁すると、県職員の場合は、県庁と現地機関のどちらかに配属することになります。
異動ケースとしては、仕事のデキるデキないで、以下の3種類があります。
- 優秀な職員:県庁内を異動したり国や大手民間企業に出向したり
- 普通の職員:県庁と現地機関の異動を繰り返したり、市町村に出向
- 仕事ができない職員:基本的には現地機関に配属になるが、上級職なら一度は本庁も経験することが多い
新規採用時に現地機関に配属してから県庁に移動し、その後ずっと県庁内を異動する職員もいます。
県庁と現地機関でも給与は全く同じです。
忙しさは部署によりますが、基本的には現地機関よりも本庁のほうが激務となります。
【関連記事↓】
県庁の出先機関は本当に楽なのか?元県職員が実態を紹介します!
まとめ
ここまで地方公務員の地方上級について元県職員が紹介してきました。
大学生なら地方上級で採用となるわけですが、実際配属後は大卒も高卒も関係なく、仕事がデキる人が重宝されますし、上司も評価も高いですし、人間関係も良好です。
学歴だけの頭でっかちで仕事がデキない人が最も嫌がられます。
地方上級で入庁したということは一旦忘れて、がむしゃらに頑張ってください。
出世については、公務員の場合、学歴+仕事の能力で決まるので、有名大学以外の人は出世は正直諦めたほうがいいと思います。