公務員は年功序列だとよく言われますが、
- 本当に年功序列なのか?
- 毎年給料は上がるのか?
- 昇給額は?
- 何歳でどの程度もらえるのか?
そんな疑問について、元県職員の私が「公務員の昇給」について紹介します。
おもに、
- 公務員に興味がある人
- 昇給が気になる若手公務員
に役立つ内容となっています。
- 毎年4月1日が昇給日で約4000円~8000円程度上がる(個人差あり)
- 人事評価制度は不公平(個人的見解)
- 年齢別平均給与とモデルケース(地方公務員と国家公務員)を紹介
なお、今回の記事は地方公務員(某県庁)の昇給についての事例で紹介します。
細かい点などは自治体で異なっている可能性がありますので、ご了承ください。
【執筆者↓】
公務員の給料は「給料表」「号俸」「級」で決まる
公務員の給料は「給料表」で全て定められています。
この給料表は「号俸」と「級」から成っています。
例えば、
- 1級の1号俸は「144,200円」
- 1級の10号俸は「154,700円」
- 2級の1号俸は「195,200円」
- 2級の10号俸は「205,700円」
のように、級があがるほど、号俸があがるほど、給料は上がっていきます。
※給料表の参考→東京都人事委員会HP「東京都職員給料表」
公務員の昇給は毎年4月1日
公務員は毎年「4月1日」が昇給日となっていて、基本的に毎年給料が上がります!
どの程度給料が上がるかといいますと、
- 職員の区分(一般職員、部長級、高齢層職員)
- 仕事の成績(特に良好or良好or良好と認められない)
に応じて、「昇給しない」場合から最高「5号俸以上」上がる場合があります。
ただし、「標準の昇給号俸数」があり、一般職員(特に20~30代)は普通に勤務していると毎年「4号俸」ずつ上がるのが基本です。
金額の目安としては、「1号俸が1,000円~2,000円程度」です。
ということは、毎年4月1日で4,000円~8,000円程度月給が上がります。
実際、私の勤めた9年間は記憶がある限り、毎年4号俸ずつ上がりました。
この9年間、本庁勤務、現地機関勤務、量や質が全く違う様々な仕事を担当しましたが、仕事の内容に関わらず一律4号俸でした。
昇任はある程度年齢で決まっている
「昇任」はほぼ年齢によって決まっていて、
「ある程度の年齢になれば主任」
「この経験年数だからそろそろ順番的に係長になる」
みたいな感じです。
例えば、滋賀県の公表している職員モデル給与例(行政職)ですと、
- 25歳主事
- 30歳主任
- 35歳主査
- 40歳係長
- 45歳主幹
- 50歳課長補佐
- 課長
- 部長
となっています。
(参考データ:滋賀県職員モデル給与例)
このへんは各自治体でバラツキがあると思います。
年齢が上がるにつれて昇給昇任に差が出始める
私が勤務した県では、同年齢の同期は一斉に主事から主任に昇任しました。
ですが、ほんの数人、いわゆるエリート街道を突き進んでいる一部の優秀な同期は1年早く昇任(主事→主任)しました。
同じ年に入庁したはずなのに、60歳になるころには、
- 部長まで上り詰める人
- 本庁の課長で息を吐いている人
- 現地機関の課長どまりの人
- そもそも課長に上がれない人
など学歴・能力などで明確に差がつきます。
不公平な人事評価制度
職員の業績評価は「人事評価制度」が用いられています。
ただし、その評価の仕方はについては賛否両論あります。
ただ、客観的にみても、以下のように優秀な人ほど評価がどんどん良くなっていってしまいます。
- 優秀な人は、多忙で質の高い花形部署や国(総務省など)に異動・出向することが多い。
- その職場で質の高い仕事をこなし、素晴らしい業績を残す。
- そうなると、優秀な人にはさらに難題な仕事が分担される。
- そこでさらに成果をあげていると、いつしか部長コース(出世コース)に乗っていて、歴代の部長達が通ってきたポストをあとを追うように異動していく。
例えば、
- 本庁の観光誘致課で新しい企画をバンバン考える職員
- 現地機関で課の総務を担当している職員
では、平等な評価の機会があるとはいえません。
どちらの仕事も県にとってはなくてはならない仕事ですが、仕事内容が違いすぎます。
民間でいえば、
- 営業職でバンバン利益を上げている人
- 総務課で給与事務をしている人
を一律に比べて評価をしている感じです。
若手が偉業を達成すれば、一気に昇任することはある?
例えば28歳の若手職員がとんでもない業績を成し遂げたとしても、その人が係長になることはないし、40歳の人がいきなり部長になるということはありません。
そもそも若手職員にそんな大きな仕事は分担されません。
ただ、完全に可能性がないということもありません。
私の県で10年以上前に、改革好きな人が知事に就任したときは、「知事に認められ40代で部長級に大抜擢された人がいた」伝説の話があります。
ちなみに、国家公務員30代のキャリア組の人が、いきなり県庁の課長補佐級のポストに出向してくることはよくありました。
年齢別の給料月額の目安は?
ここで、公務員の年齢別月給を紹介します。
地方公務員(長野県庁)
ここで年齢別の給料月額例の参考資料として、長野県庁行政職の職務の級別平均給料月額を挙げたいと思います。
級 | 職員数 | 平均年齢 | 平均給料月額 |
---|---|---|---|
1 | 542 | 32.5歳 | 214,290円 |
2 | 775 | 30.3歳 | 244,934円 |
3 | 510 | 37.7歳 | 299,781円 |
4 | 1149 | 47.9歳 | 371,729円 |
5 | 731 | 54.2歳 | 399,774円 |
6 | 405 | 55.8歳 | 412,411円 |
7 | 229 | 56.7歳 | 442,896円 |
8 | 55 | 57.4歳 | 470,349円 |
9 | 19 | 57.6歳 | 517,979円 |
(※長野県人事委員会事務局、令和5年職員の給与等に関する報告及び勧告の「職員給与関係資料第7表」より一部抜粋)
国家公務員
続いて、国家公務員の年齢別平均給与月額を挙げたいと思います。
年齢 | 平均給与月額 |
---|---|
20歳未満 | 170,465円 |
20歳以上24歳未満 | 207,550円 |
24歳以上28歳未満 | 249,948円 |
28歳以上32歳未満 | 293,171円 |
32歳以上36歳未満 | 338,135円 |
36歳以上40歳未満 | 383,663円 |
40歳以上44歳未満 | 424,866円 |
44歳以上48歳未満 | 455,952円 |
48歳以上52歳未満 | 477,817円 |
52歳以上56歳未満 | 500,401円 |
56歳以上60歳未満 | 507,430円 |
(※令和5年国家公務員給与等実態調査の結果より抜粋(人事院)行政職俸給表(一)(大卒))
上表でわかるとおり、公務員は安定して昇給し続けているのがわかります。
給与モデルケース
参考として、公表されている地方公務員(滋賀県)と国家公務員それぞれの給与モデルケースをご紹介します。
地方公務員(滋賀県庁)
職階 | 年齢 | 月額給与 (年間給与) |
---|---|---|
主事 | 25 | 236,069円 (3,895,000円) |
主任主事 | 30 | 266,170円 (4,392,000円) |
主査 | 35 | 306,159円 (5,121,000円) |
係長 | 40 | 338,195円 (5,656,000円) |
主幹 | 45 | 389,579円 (6,603,000円) |
課長補佐 | 50 | 415,164円 (7,037,000円) |
課長 | ー | 545,132円 (8,919,000円) |
部長 | ー | 675,442円 (11,556,000円) |
※滋賀県職員の給与等に関する報告および勧告(令和5年)モデル給与例より一部抜粋。(大卒上級採用者、給料、管理職手当、地域手当を基礎に算出)
国家公務員
職階 | 年齢 | 月額 (年間給与) |
---|---|---|
地方機関係員 | 30歳 | 236,900円 (3,890,000円) |
地方機関係長 | 35歳 | 278,700円 (4,638,000円) |
地方機関課長 | 50歳 | 414,300円 (6,761,000円) |
本府省課長補佐 | 35歳 | 439,400円 (7,307,000円) |
本府省課長 | 50歳 | 751,200円 (12,717,000円) |
本府省局長 | ー | 1,077,600円 (17,909,000円) |
事務次官 | ー | 1,413,600円 (23,493,000円) |
※内閣官房内閣人事局:国家公務員の給与(令和5年版)より抜粋
国家公務員のいわゆるキャリア組で、課長や局長そして事務次官まで出世すると、地方公務員の上級職では到底手にできない給料をもらえるようになります。
まとめ
ここまで公務員の昇給について紹介してきました。
毎年安定して給料が上がる点はさすが公務員といえます。
人それぞれのお金の価値観によって、公務員の給料が高い・安い双方の考え方がありますが、毎年昇給し、ボーナスが支給され、しっかりとした福利厚生がある公務員を志望動機としている受験生は多いのではないでしょうか。
コロナ禍で民間企業が減給やボーナスカットをしていたときも、昇給やボーナス支給されていた公務員はやはり「安定している」とあらためて思いました。
ただし、この先どうなるかはわかりません。
「10年後の仕事図鑑」(著 落合陽一・堀江貴文、出版 SBクリエイティブ)では、公務員はほとんど不要だとする意見もでていました。
いずれにしても、公務員の給料や身分がこの先ずっと安定し続けているかどうかは誰にもわかりません。
公務員の給料や福利厚生だけに期待して職員になるのは、あまり良いとも言い切れない時代に入ったということです。
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