公務員試験の合否を大きく左右する「面接試験」。
その中で特に重要なのが、面接カード(エントリーシート)の記入です。
この記事では、元県職員として受験・指導の両面で豊富な経験をもつ私が、「志望動機」と「自己PR」の書き方・コツ・例文をわかりやすく紹介します。
大学4年時に「県庁」と滑り止めで「国」を、また県庁を退職してから「学校事務」と「社会人枠」で再受験し、全て一発合格しています。
- ○県職員採用試験(大学卒業程度)(2008年)最終合格、採用
- 国家公務員採用試験(一般職)(2008年)最終合格、官庁訪問は林野庁、内定辞退
- ○県小中学校事務職員採用試験(2018年)最終合格、採用
- ○県職員採用候補者試験(社会人枠)(2018年)一次試験合格、二次試験辞退
面接カードとは?その役割と重要性
面接カードとは、面接試験前に提出する書類で、「志望動機」「自己PR」「学生時代に力を入れたこと」「特技」などを記入するものです。
このカードは、単なる事前アンケートではありません。
面接官は面接試験前にカードに目を通し、面接当日の質問内容を考えます。
つまり、面接カードは面接の台本であり、面接試験そのものの「設計図」ともいえる存在なのです。
記載内容によって面接官の興味を引いたり、不信感を与えたりする可能性もあります。
だからこそ、面接カードはただの書類ではなく、戦略的に書くべき最重要アイテムなのです。
面接カード作成時におさえておくべきポイント
面接カード作成時におさえておくべきポイントを4つ紹介します。
1.嘘・誇張はNG
面接カードには事実をもとにしたエピソードを書きましょう。
面接官の受けを良くしようと思い、見栄を張って話を盛って書いたり、嘘を書くと、質問で突っつかれたときにボロがでてしまいますので止めておきましょう。
2.面接で深掘りされる前提で書く
書いた内容はほぼ確実に深掘りされます。
つまり、「書いたこと=質問されること」です。
自信がないエピソードは避け、自信を持って話せる内容を書くようにしましょう。
3.書き込みすぎは逆効果
空欄を埋めることに必死になりすぎて面接カードに事細かに書きすぎると、面接時に質問されてもカードに書いてある内容をただ同じようにしゃべるだけになってしまいますので、聞いている面接官はなんだか白けてしまいます。
面接カードを書くときは、適度な余白と簡潔さを意識しましょう。
面接カード自体は採点の対象ではありませんので、たくさん書いても得点は上がりません。
4.読みやすさにも配慮する
面接官は何人もの面接カードを読みます。
誤字脱字のチェックはもちろん、文字の大きさ・行間・字の丁寧さなど、読みやすさにも気を配りましょう。
【字の下手さ】
下手でも大丈夫ですが、面接官が読める程度にはしましょう。
私も字がかなり汚いほうでしたが、可能な限りゆっくり丁寧に書くようにしました。
【字の大きさ】
ある程度大きめに書いたほうが面接官は読みやすいです。
よく印字と同程度の大きさが良いと言う人もいますが、それでは小さ過ぎのような気がします。
【文字数】
欄の9割程度埋めるようなイメージで良いと思います。
真っ黒に文字で埋め尽くすことなく、行間などを適宜とり、全体的にすっきりした見栄えになるようにしましょう。
欄をはみ出すような長文では、見た目の印象は悪いですし、自分の伝えたいことを端的にまとめる能力がないと思われるかもしれません。
【誤字脱字】
誤字脱字は十分注意してください。
慎重に書き、書き終えたら念入りに見直しをしてください。
一旦wordなどで作成し、それを書き写すほうが効率が良いですね。
志望動機の書き方|差がつく5つのポイント
それでは志望動機の書き方・コツを5つ紹介します。
- 志望動機の区分化
- 具体性をもたせる
- オリジナリティを出す
- 実はあまり期待されていない
- 参考書がかなり使える
ポイント1:志望動機の区分化
面接官からよく聞かれる質問が「民間ではなく、国でなく、市町村ではなく、他県ではなく、なぜ我が県を受験したのか」です。
この点を明確に区分して、面接カードを準備しましょう。
「ああ、なるほど、だから我が県でなくては駄目なのか」と思わせることができる志望動機が準備できれば、面接官の印象が良いです。
ポイント2:具体性をもたせる
志望動機を書く際は、その県の内情・業務内容をしっかり調べたうえで書いたほうがいいです。
抽象的に「県のような大きな自治体の行政に携わりたい」とか書くのではなく、実際にその県独自の「この施策に携わりたい」、あるいはその県には「このような課題があるため、大学で学んだ知識を生かし、こういった施策を行っていきたい」など、「具体性」を意識して志望動機をつくりましょう。
具体的に書くことで面接官は「これだけ我が県のことを勉強している、よっぽどうちの県に入りたいんだな、ただの併願先ではないな」と思い、印象が格段に良くなります。
業務内容・施策などは自治体のHPを利用しましょう。
採用ページに業務内容が掲載されていますし、職種別パンフレット(PDF)が用意されている場合もあります。
ポイント3:オリジナリティを出す
志望動機で一番大切なのは、あなただけのオリジナルエピソードを書くことです。
オリジナルエピソードを書くことで、
- 他の受験生と差別化
- 面接官に熱意が伝わりやすくなる
- 質問に答えやすくなる
などのメリットがあります。
大学生は講義・ゼミ・卒業研究・アルバイト・ボランティア・部活・サークル・インターンシップなど様々な経験を4年間でしてきたと思うので、自分だけの経験談を踏まえて志望動機を書きましょう。
社会人は、前職・現職での経験を志望動機にもりこむようにするとより良い志望動機になります。
ポイント4:実はあまり期待されていない
志望動機の書き方やコツを紹介してきましたが、実は面接官側からすると、そこまで志望動機の内容についてはこだわっていません。
それは受験生でだいたい似たような内容が多いからです。
ですので、とりあえず志望動機を最初のうちに聞き、他の受験生と同じようにちゃんと答えられるかだけをチェックし、それから色々と深堀りしていき、それに対する受験生の回答を重要視しています。
ポイント5:参考書がかなり使える
公務員の面接や面接カードの書き方については、現職の国家公務員人事の方が書かれた有名な参考書が毎年発行されています。
でも公務員試験受験生ならほとんどの人が知っている、あるいは持っているので、本の存在を知らない人だけが損する話ですね。(弱肉強食の世界)
私も愛用していましたし、公務員試験に合格した大学の同級生達も利用していました。
宣伝みたいに見えてしまうかもしれませんが、本当に使えるのでオススメしておきます↓
(ぜひ一度書店で立ち読みしてみてください!)
公務員試験 現職人事が書いた「自己PR・志望動機・提出書類」の本 2025年度、大賀英徳、実務教育実務教育出版
志望動機の例文(行政職・技術職・社会人)
ここで、参考までに例文を挙げます。
あくまで感覚や形を掴んでもらうための一例ですので、あなた独自の志望動機をしっかり考えて作成してください。
ここで紹介した内容をそのままでいくと、落ちます(深掘り質問されたときに、答えられないので)。
行政職
「私は大学で〇〇学を専攻しています。就職先を検討している中、貴県の業務説明会に参加し、〇〇が課題となっていて、県をあげて取り組んでいるとお聞きし、私が大学で学んできたことが活かせ、かつ県民のお役に立てるのではないかと思い、志望しました。説明会後、総合計画を閲覧したところ、どのプロジェクトとも非常に魅力的に感じたので、この〇〇以外の仕事が担当になっても全力で頑張っていきたいと思います。」
技術職
「大学で野生動物について学んでおり、その知識を活かし、かつ故郷のためになる仕事をしたいと考えていたところ、講義で貴県の先進的な鳥獣被害防除対策について学ぶ機会がありました。その取組に非常に共感したため、実際OBにお会いして業務内容などをお聞きしたところ、私の知識やスキルが十分活かせると思ったのと、OBが非常に熱く語ってくださった姿に、こういう人達と一緒に県民のために頑張りたいと決意が固まり志望させていただきました。」
社会人枠
「私は旅行会社で長年勤めてきました。現職でも十分やりがいを持ってお客様のために働いてきましたが、故郷である貴県で今観光客誘致・インバウンドが課題となっている、そしてプロジェクトが推進されていることを偶然一緒に仕事をさせてもらった県職員の方からお聞きしました。それなら私が旅行会社で培ってきた能力が十分活かせるのではないかと思ったのと、公益的に故郷の旅行業・観光業に携わる人の役に立てる公務員としての姿・働き方に共感したため、今回志望いたしました。」
自己PRの書き方|実務とつなげてアピール!
つづいて、自己PRの書き方やコツを紹介します。
ステップ1:施策や業務内容を調べる(これが一番大事)
受験する自治体のHPで施策や業務内容を勉強しましょう!
採用ページに業務内容が掲載されていますし、職種別パンフレット(PDF)が用意されている場合もあります。
自治体独自の「総合5か年計画」などが策定されているので、それを読むと自治体の長期ビジョンが分かり、とてもおすすめです。
総合計画を読むことで、県独自の施策や課題が把握できるため、面接カードが書きやすくなりますし、面接時に具体的な回答ができ、高評価となります。
施策や業務内容を勉強することは自然と面接対策にもつながりますので、時間をかけて重点的に行いましょう。
ステップ2:自分の経験・スキルを整理する
業務内容を勉強し把握できたら、今度はその業務を遂行するうえで必要な能力を考えます。
そして、その能力を自分が兼ね備えていることをアピールできれば「自己PR」ができあがります。
例えば、
【大学生の場合】
講義・ゼミ・卒業研究・アルバイト・ボランティア・部活・サークル・その他様々な経験を大学4年間でしてきたと思います。
その中で、できる限り人とかぶらない自分オリジナルの知識・スキル・経験と公務員の業務遂行に必要な能力をつなげます。
【社会人の場合】
社会人では大学の頃のことは書かず、前職で培ってきたスキル・専門知識・経験でアピールしてください。
大学生のことを書くと、この人は社会人になって一体何を学んできたのだろう?と思われかねません。
社会人には様々な職種の人がいるので、大学生よりオリジナリティが出しやすいので有利です。
自己PRの例文(行政職・福祉職)
以上のことを踏まえて、自己PRを完成させます。
分かりやすくするため、例文を少しだけ挙げておきますので、参考にしてみてください。
行政職
「総合5か年計画のなかで、信州ブランド確立プロジェクトの推進が目標とされています。プロジェクトの成功には県外へのブランド発信が鍵となります。これからの時代はいかにITを駆使して情報発信ができるかが問われており、行政職のなかでもITスキルに長けた人材が必要だと考えます。私は昔からインターネットを利用した情報発信が好きで、大学時代もブログを立ち上げ、有益な情報を発信し続けてきました。また、将来役立つと思い、現在ITスキル関係の資格取得を目指しています。このITスキルを十分にブランド発信などの業務に活かしていきたいと考えています。」
この分量だとちょっと長文過ぎなので、もう少し短く端的にまとめるようにしましょう。
福祉職
【福祉職、社会人(営業系)の場合】
「相談業務の仕事で重要な能力は「傾聴力」だと考えます。傾聴するにはまずは相談者との信頼関係がなければ相談者も話しづらいです。そこで、私には営業職で培ったお客様との信頼関係構築力があるので、ぜひ福祉職で活かしていきたいと考えています。」
【福祉職、社会人(事務系)の場合】
「福祉職の業務は相談業務・支援業務がメインとなります。相談を受けたあと、相談者一人ひとりに適した支援プランを考えていくには、市町村や関係機関と連携が必要であり、チームワークが必要不可欠になります。私は前職で事務職として働いていた経験があり、その際、チームの仕事管理を担っており、効率良く業務が進むよう仕事をしていました。その仕事で培ったマネジメント能力を活かし、効率よく支援プラン作成を進めていくなど、福祉職の業務にいかしていきたいと考えています。」
こう書くと、「信頼関係構築力があるとのことですが、構築していくうえで大変だったことや心がけていたことはありますか?」と来ることは予想でき、面接対策もしやすくなります。
大変な思いをして新社会人のころから試行錯誤を繰り返してきたことへの質問なので、経験を踏また深みのある回答ができると思います。
面接カードは「面接試験そのもの」だと心得よう
面接カードは単なる書類ではなく、面接官との最初の接点であり、面接試験の設計図です。
書き方ひとつで、面接官の印象も質問内容も変わります。
書いた内容が深掘りされたときに、自信を持って話せるよう、準備と練習を重ねましょう。
まとめ|あなたの言葉で、伝わる志望動機と自己PRを
- 志望動機は「なぜこの自治体なのか」を、具体的かつオリジナルな言葉で伝える
- 自己PRは「自分の強みが業務にどう活きるか」を意識する
- 面接カードは面接そのもの。深掘りされる前提で書く
あなたの経験や想いを言語化し、他の受験生と差がつく面接カードを作成しましょう。
そうすれば、合格は自ずと近づいてきますよ!
応援しています!
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【添削サービス実施中】
ちなみに、出来上がった面接カードの添削を「ココナラ」上でしているので、気になる方は下記のリンクより確認してみてください。
9年間の県職員&添削歴4年の実績があり、これまで様々な自治体の合格者を輩出しています。
【出版本の紹介】
