「うつ病」を発症し、休職あるいは退職する公務員は多く、近年その数は増加傾向となっています。
【うつ病発症からの流れ】
- 精神科・心療内科を受診、休職のための診断書発行
- 診断書を係長へ提出後、口頭で簡単に引き継ぎ、当日か翌日中に休職に入る
- まずは療養休暇(給料満額支給)、そして休職(給料8割、途中から無給)へと移行
- 復職や休職延長の場合、精神科医の診断書が再度必要
・無給状態になると共済組合から傷病手当金(だいたい給料の2/3)が支給される
・うつ病になる前に精神科への受診、相談(配置転換など)、退職をすることが大事!(病気になってからでは遅い)
うつ病の発病から休職、復職までの流れ
うつ病の発病
うつ病の症状は個人差がありますが、例えば以下のような症状がみられます。
(引用文献:「ストレスフリー超大全」著 樺沢紫苑、ダイヤモンド社)
- 気分が落ち込む
- 何をしても楽しくない
- 食欲の減少(あるいは増加)
- ほぼ毎日の不眠
- イライラする
- 気力がない、疲れやすい
- 自分には価値がないと考えてしまう
- 集中力が散漫でミスが多い
- 死にたい、自分は生きる価値がないと思う
- 肩こり、首のこり、頭痛、全身倦怠感などの身体症状
また、うつ病の自己診断の方法は以下のとおりです。
- この1ヶ月間、気分が沈んだり、憂うつな気持ちになったりすることがよくありましたか。
- この1ヶ月間、どうも物事に対して興味がわかない、あるいは、心から楽しめない感じがよくありましたか。
「この1ヶ月間」と「よくある」かどうかが重要。
この質問のうち1つ当てはまるとうつ病の可能性があり、両方があてはまると、うつ病の可能性が約88%となりますので、精神科を受診しましょう。
精神科(心療内科)を受診
うつ病の可能性が高い場合は、すぐに精神科(心療内科)に行きましょう。
受診が遅くなればなるほど、症状固定・悪化します。
結果、1ヶ月で良くなるはずだった軽症のうつ病が、数ヶ月・半年・1年・数年以上療養に時間を要してしまう重度のうつ病になりかねません。
うつ病と診断されると、医師から休職して療養するよう指示があり、「診断書」が発行されます。
症状にもよりますが、最初の療養期間は1ヶ月や数ヶ月となることが多いです。
上司(係長など)に診断書を提出し、すぐ療養休暇に入る
診断書をもらったらその日のうちに、すぐに係長に電話するか、職場に行き直接係長に渡します。
その日あるいは翌日から療養休暇に入りますので、診断書を提出する際に簡単に口頭で仕事の引き継ぎを行います。
(引継書は作らなくていいです、仕事の状況を常日頃から把握しておくのが係長の仕事ですから)
療養休暇等の手続きは全て係長や総務担当者が代理で行ってくれますので診断書が出た次の日から安心して療養に入ってください。
休職中
とにかく自宅でしっかり静養しましょう。
ときどきどうしても確認しなくてはいけない仕事の関係で、係長からメールや電話がくることもあります。
(できればそっとしておいてほしいのですが)
この期間は基本的に休むことに専念して、遊び歩くのは控えましょう。
だんだん体調が良くなってやる気が増えると、活動的になってきて旅行とか行きたくなる人もいます。
しかし、職場の人に見られたりすると当然良い印象は受けないです。
(旅行や遊んでる様子をSNSに投稿するのはやめましょう)
あと、症状が良くなってきても、通院は必ずしっかり続けましょう。
なぜなら休職を延長する場合や復職する場合に、精神科医の診察を受け、再度「診断書」を発行してもらう必要があるからです。
復職
医師から復職が認められた場合、何日から働いてもよいと書かれた「診断書」を発行してもらいます。
その診断書を上司に提出し、復職にあたっての調整をして、復職となります。
最初は、「半日勤務」や「仕事量を減らす」などのいわゆる「リハビリ出勤」があり、数週間かけて徐々に通常勤務に移行していきます。
公務員の場合、年度途中で復職した場合、配置転換は行われない可能性が高いです。その職場でしっかり病気を治してから異動というのが基本です。ただし、明らかにその職場での特定事項が病気の原因ということになれば、配慮され復職時に異動する場合もあります。
退職
休職中あるいは休職復職を繰り返したあと、退職の道を決断する人もいます。
退職を決めたら係長などに申し出ることになりますが、うつ病を原因としての退職は強く引き留められる可能性が高いです。
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療養休暇と休職の期間や給与
公務員は病気の種類によって休職期間が異なります。
風邪とかで数日休む場合は通常「年次休暇」で対応しますが、うつ病のように長期に休暇が必要となる場合、まずは「療養休暇」を取得し、その後「休職」に移行します。
※注意!休める期間や支給される給与などは国家公務員や地方公務員、各自治体で異なります!
療養休暇の期間・給与
「療養休暇」の取得できる期間は、国家公務員90日間、地方公務員は90日間や180日間などとなっています。
この間給料は100%満額支給されます。
ただし、某県では通勤手当は支給されず、ボーナス(勤勉手当)は減額、昇給も休暇期間に応じて抑制されます。
(公務員のボーナス=勤勉手当+期末手当)
休職の期間・給与
療養休暇を90日間あるいは180日間取得し終わると、「休職」期間に移行します。
休職期間は3年間とされていて、3年経過後なお症状に改善が見られず、業務遂行が困難とする医師の診断がでると分限免職(クビ)となる可能性が高いです。
休職期間中の給料は自治体で異なっていて、
【国家公務員の場合】
最初の1年間は給与の80%支給、その後2年間は無給となります。
(参考文献:一般職の職員の給与に関する法律)
【地方公務員の場合】
自治体で異なり、
- 国と同様、最初の1年間は給与の80%が支給され、その後2年間は無給とする場合
- 3年間8割支給する場合
- 2年間8割支給する場合
- 1年間10割支給する場合
などバラバラです。
また、某県の例ですと、諸手当も8割、ボーナスは減額(勤勉手当はなし期末手当は8割)、退職金の算定期間も半分にされ、昇給も抑制されます。
【共済組合の傷病手当】
組合員が公務によらない病気やケガで勤務を休み、報酬が減額されたり、支給されなくなったりしたときに「傷病手当金」が支給されます。また、傷病手当金の受給終了後、同じ病気やケガで勤務することができない場合は、「傷病手当金附加金」が支給されます。1年6ヵ月間は給与の約2/3の「傷病手当金」、引き続く6ヶ月間は「傷病手当附加金」が支給されます。
参考:地方職員共済組合HP
これにより、自治体によっては、
- 休職後の最初の2年間は自治体からの減額された「給料」が支給
- 残り1年間は共済組合から「傷病手当金」が支給
結果、休職中の3年間は無給状態にはならないことになります。
また、現役時代に受け取らなかった傷病手当金は退職後に申請すれば支給されます。
詳細は記事にしてありますので、良かったらご覧ください。
傷病手当金は退職後でも受給可能!公務員の受給方法をしっかり解説!
まとめ ~うつ病にならないことが何よりも大事!~
以上、公務員がうつ病になったときの休職について紹介してきました。
民間と比べるとかなりうつ病などのメンタル疾患に対しては手厚い休職制度となっていて、給料や手当をもらいながら、じっくり腰をすえて療養に励むことが可能です。
最初の療養休暇90日間(給料満額)+休職1年間(給料8割)+休職2年間(傷病手当金など)と、最大3年ちょっとはお金に困ることはありません。
ただ、うつ病は再発率が非常に高い病気です。
しかも完治はせず、寛解状態(症状は出ていない状態)までしか治らず、「過去の能力以上の力は発揮できない」と精神科医の樺沢紫苑先生はおっしゃられています。
そのため、何よりも大事なことはうつ病を発症させないこと!これにつきます。
体が壊れそうなときは、「逃げるべき」だと私は強く言いたい。
組織はあなたがいなくなったとしても全く困りません、特に公務員という大きな組織であればなおさら大丈夫、いくらでも代替要員はいます。
そんな組織のために体を壊すまで働く必要はありませんし、辞めてもいくらでも働き方はあります。
働けない場合は障害年金(審査あり)を受給しながら生活していくことも可能です。
無理して公務員にしがみつかなくても大丈夫です。
【関連記事】
【公務員】うつ病かもしれないと思ったら(受診の基準と対処法)