「教員免許を持っていないけど、学校で働きたい」
「高校で働ける公務員ってあるの?」
そんな人におすすめなのが、教員免許を持っていなくても、公立高校で学校職員(正規公務員)として働くことができる【実習助手】という職業です。
この記事では、元県職員の筆者が実体験をもとに、
実習助手とはどんな仕事か
採用試験の内容と倍率
給与や待遇
受験体験談
について、くわしく解説します。
実習助手とは?教員免許なしでも働ける学校職員
実習助手とは、高校などで実験・実習授業のサポートを行う「教育職員に準ずる学校職員」です。
多くの自治体で正規の地方公務員として採用されており、教員免許がなくても応募可能です。
実習助手の主な仕事内容
業務カテゴリ | 内容 |
---|---|
実験・実習の補助(メインはこれ) | 授業中のサポート、準備・片付け、機器操作補助など |
実験室の管理 | 器具の整備・薬品の保管・設備の点検など |
校務分掌 | 生徒指導、進路指導の補助(地域や学校により差あり) |
部活動の顧問 | 一部担当することも。ただし、引率には教員免許が必要 |
教員とは違い、「担任」や「成績評価」などは行いません。
実習助手が活躍する教科・分野
理科(物理・化学・生物など)
農業(園芸・食品・造園など)
工業(機械・電気・建築・工芸など)
水産(機関・無線技術など)
家庭
社会福祉
舞台表現 など
理科や工業、農業などの「実習」が多い教科を中心に、全国の公立高校で募集があります。
実習助手の採用試験とは?倍率や試験内容まとめ【都道府県別】
実習助手の採用試験は、すべての都道府県で毎年実施されているわけではありませんが、一部の自治体では定期的に採用があります。
ここでは4都県の試験概要を紹介します。
東京都の公立学校教職員採用候補者選考(実習助手)
内容 | 詳細 |
---|---|
採用教科 | 工業・農業・家庭・理療・水産・舞台表現(各若干名) |
受験資格 | 昭和60年4月2日以降生まれ・高卒以上(普通科を除く) |
試験内容 | 専門教養(60分)、論文(800字)、個人面接 |
倍率例 | 工業(電気):1.2倍、家庭:6.0倍 |
【(参考)令和5年度選考結果】
教科 | 受験者 | 合格者 | 倍率 |
---|---|---|---|
工業(電気・電子系) | 7 | 6 | 1.2 |
工業(工業化学系) | 2 | 1 | 2.0 |
農業(園芸系) | 5 | 1 | 5.0 |
農業(食品系) | 0 | 0 | ー |
農業(造園系) | 1 | 1 | 1.0 |
家庭 | 6 | 1 | 6.0 |
水産 | 0 | 0 | ー |
参考:東京都HP「令和6年度東京都公立学校教職員採用候補者選考(令和7年度採用)(実習助手及び寄宿舎指導員)実施要綱
千葉県の県立学校実習助手採用選考試験
内容 | 詳細 |
---|---|
採用教科 | 一般(5人)、工業(3人)、農業(4人) |
受験資格 | 昭和60年4月2日以降生まれ・高卒以上 |
試験内容 | 専門試験、適性検査、論文、個人面接 |
倍率例 | 工業(電気):1.2倍、家庭:6.0倍 |
千葉県は採用人数が多めなのが特徴です。
神奈川県の県立学校実習助手採用選考試験
内容 | 詳細 |
---|---|
採用教科 | 工業・農業・水産・理科(各1~3人程度) |
受験資格 | 昭和39年4月2日以降生まれ・高卒以上 |
試験内容 | 教養試験(高卒程度)、専門試験、個人面接 |
倍率例 | 農業:24倍、理科:15倍、工業(電気):4.5倍 |
神奈川県の競争倍率は教科によって大きく異なります。
【(参考)令和6年度選考結果】
教科 | 1次受験者 | 最終合格者 | 競争倍率 |
---|---|---|---|
工業(建設) | 5 | 1 | 5倍 |
工業(機械) | 9 | 1 | 9倍 |
工業(電気) | 9 | 2 | 4.5倍 |
工業(化学) | 3 | 1 | 3倍 |
農業(園芸) | 24 | 1 | 24倍 |
水産(機関) | 1 | 1 | 1倍 |
水産(無線技術) | 1 | 1 | 1倍 |
理科 | 45 | 3 | 15倍 |
参考:「令和6年度神奈川県立学校職員採用候補者選考実施要項」
【合格者選考基準】
第1次選考の合格者:募集人員の2倍以上の人数
基準点:教養考査30点(100点満点)、専門考査30点(100点満点)※基準点を下回った場合、即不合格
長野県の県立高等学校実習助手採用選考
内容 | 詳細 |
---|---|
採用教科 | 農業・工業・理科(若干名) |
受験資格 |
|
試験内容 | 教養試験(高卒程度)、小論文(800字)、適性検査、個人面接 |
参考:長野県HP「令和7年度長野県立高等学校実習助手採用選考要項」
※長野県は一般選考と若年者選考の2種類があります。
長野県は公式サイトで過去問(一般教養、小論文)も公開しており、事前対策がしやすいのが特徴です。
実習助手の給料・手当は?正規職員ならではの待遇
実習助手は正規の地方公務員として採用されるため、給与や手当、昇給制度もしっかり整っています。
初任給(都道府県別)
都県 | 初任給 |
---|---|
東京都 | (高校新卒)約196,000円 |
千葉県 | (高校新卒)約198,359円 (短大新卒)約220,818円 (大学新卒)約244,272円 |
神奈川県 | (高校新卒)約216,000円 (大学卒)約261,000円 |
長野県 | (高校新卒)186,247円 (大学新卒)229,683円 |
※地域手当・教職調整額など含む概算です。
各種手当・待遇
- 扶養手当
- 住居手当
- 通勤手当
- 教員特別手当
- 教職調整手当
- 期末・勤勉手当(ボーナス年2回)
- 昇給年1回(4月)
実習助手試験の体験談|実際に受験してみた感想
ここでは、筆者が受験した際(2017年)の実体験を紹介します。
教養試験の内容と難易度
出題範囲:公務員初級試験(高卒程度)レベル
出題形式:択一式で幅広い分野から出題
難易度:やや簡単〜標準。独学でも十分対策可能。
受験者層と雰囲気
年齢層は高校生〜50代まで幅広い
女性の受験者も多い印象
理科の区分では50人程度の受験生に対し、通過者は10人未満
過去問の重要性
実習助手はこんな人におすすめ!
✅ 高校の理科・農業・工業などの知識を活かしたい
✅ 安定した正規公務員として働きたい
✅ 実習中心の授業を支える仕事にやりがいを感じる
実習助手以外にも!学校で働ける職業例
実習助手以外にも、学校で働ける正規職員として以下の職種があります。
▶ 小中学校事務職(県職員)
各小中学校の事務室で総務・経理業務を担当
教員免許不要
採用は県職員採用試験(地方上級・地方初級)で実施
まとめ|実習助手は「教員免許なし×正規職員」の貴重な選択肢
実習助手は、教員免許がなくても高校で働ける正規公務員の仕事です。
理科や工業、農業などの分野に関心がある人にとっては、自分のスキルを教育現場で活かせるチャンスになります。
募集は毎年とは限らないため、気になる都道府県の採用情報をこまめにチェックしましょう。