「公務員試験で有利になる資格ってあるのかな?」
「公務員の仕事で役立つ資格とかスキルってなに?」
と気になる受験生も多いかと思います。
結論からいって、一部自治体で外国語などの加算が多少ある程度で、基本的に資格で有利不利になることはありません。
そもそも公務員試験は学歴不問ですしね。(年齢制限はありますけど)
しかし、働きだしてから持っていれば重宝されるスキルなどはあります。
本記事では、公務員試験で加点される資格や公務員が持っていると役立つ資格・スキルについて元県庁職員9年の私がシンプルにご紹介します。
- 英語などの試験スコアが高い人(例えばTOEICで730点以上)は、公務員試験で加点される場合がある(自治体による)
- 公務員の仕事に役立つスキルは「コミュニケーション能力、パソコンスキル、勉強スキル、自動車運転免許」
公務員試験の際に加点される資格
外国語の試験スコアや情報系スキルなどに応じて、公務員試験の点数に加点する自治体があります。
加点される点数はあまり大きくないですが、そもそも公務員試験は競争率が高いので、筆記試験の1問や2問の差で不合格となっている人もいます。
その中で少しでも加点される制度は、語学が堪能な受験生には非常にありがたいと制度だといえます。
加点制度を導入している自治体の事例をいくつかご紹介します。
なお、詳細は各自治体の受験案内をご覧ください。
国家公務員(総合職採用試験)の加点
英語試験のスコアによって、総合得点に「15点」か「25点」が加算されます。
試験 | スコア等 | 加点 |
---|---|---|
TOEIC | 730点以上 | 25点 |
600点以上 | 15点 | |
TOEFL | 80点以上 | 25点 |
65点以上 | 15点 | |
英検 | 準1級以上 | 25点 |
なぜ英語試験を活用するのかについて、人事院が回答しているのでご紹介します。
行政の国際化が進展し、従来、国際的な関わりがないと考えられた分野でも、諸外国との関係を考慮した政策の企画立案や幅広い国際協力等が生じてきており、公務部門における業務の遂行に当たっては、一定の英語能力を有していることが求められています。このような変化に対応していくため、主として政策の企画立案等の高度の知識、技術又は経験を必要とする業務に従事する官職に就くことが想定される者を採用するための総合職試験において、平成27年度の試験から、総合職採用者として必要な英語の基礎的能力についてコミュニケーション能力等も含め検証する目的で、外部英語試験を活用しています。
(引用:人事院「国家公務員採用総合職試験における英語試験の活用」)
秋田県(県職員大学卒業程度試験)の加点
英語、中国語、韓国語、ロシア語の試験スコアによって、「7点」が二次試験の点数に加算されます。
外国語 | 対象となる資格等 |
---|---|
英語 |
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韓国語 |
|
中国語 |
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ロシア語 |
|
長野県(県職員採用試験(大学卒業程度)・行政A一般方式)の加点
長野県では英語試験のスコアによって「30点」か「60点」、情報系スキルの資格試験によって「20点」か「40点」か「60点」が一次試験の点数に加算されます。
英語試験による加点は以下のとおりです。
外国語 | 試験等 | スコア等 | 加点 |
---|---|---|---|
英語 | TOEFL | 80点 | 60点 |
65点 | 30点 | ||
TOEIC | 730点以上 | 60点 | |
600点以上 | 30点 | ||
IELTS | 6.5以上 | 60点 | |
5.5以上 | 30点 | ||
実用英語技能検定 | 準1級以上 | 60点 | |
中国語 | 中国語検定試験 | 2級以上 | 30点 |
中国語コミュニケーション能力検定 | 550点以上 | 30点 | |
漢語水平考試 | 筆記試験:6級、5級180点以上 口頭試験:高級60点以上 | 30点 | |
韓国語 | 韓国語能力試験 | 4級以上 | 30点 |
ハングル能力検定試験 | 準2級以上 | 30点 |
情報系スキルの加点は以下のとおりになっています。
区分 | 試験名称 | 加点 |
---|---|---|
情報処理技術者試験 | 基本情報技術者試験 | 20点 |
応用情報技術者試験 | 40点 | |
ITストラテジスト試験 | 60点 | |
システムアーキテクト試験 | ||
プロジェクトマネージャ試験 | ||
ネットワークスペシャリスト試験 | ||
データベーススペシャリスト試験 | ||
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | ||
システム監査技術者試験 | ||
情報処理安全確保支援士試験 | 情報処理安全確保支援士試験 |
埼玉県日高市(職員採用試験)の加点
外国語「5点か10点」とスポーツ・文化芸術「5点」で加点があり、一次試験に加算されます。
「外国語」は、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、インドネシア語が対象で、試験スコアによって加点点数が決まります。
例えば、英語のTOEICでは、730点以上860点未満は5点、860点以上は10点が加点されます。
珍しいのが、「スポーツ・文化芸術」の加点です。
優秀な成績(※)を収めた実績がある人に対して5点加算されます。
【※優秀な成績の条件】
スポーツ:全国高等学校総合体育大会、国民体育大会など、県代表等として全国大会へ出場
文化芸術:全国高等学校総合文化祭、国民文化祭などの全国大会へ出場
公務員の仕事に役立つ資格・スキル
公務員になるには特別な資格・スキルは必要ありませんが、実務で役立つ以下のような資格・スキルもあるので、ご紹介します。
- 自動車運転免許
- パソコンスキル
- コミュニケーション能力
- 勉強スキル
自動車運転免許
自動車運転免許は採用試験では保有必須とはなっていませんが、地方では公用車が運転できなければ仕事にならない部署もたくさんあります。
その都度上司や後輩に頭を下げて運転手をお願いするわけにはいかないですよね^^;
パソコンスキル
パソコン(特にワード、エクセル、パワーポイント)については、基本レベルができれば業務に支障はありません。
仕事をしながらパソコンスキルを磨いていく、それで十分です。
ただし、パソコン関係が得意な人は職場で非常に重宝されます。
エクセルのマクロやプログラミングができる職員は、元のエクセルデータを自分の作業しやすいように改変させていきます。
そして、その使いやすくなったデータを同じような事務処理をしている人達に配布してくれるので、ほんとありがたい存在です。
また、職場でパソコンやネットワークのトラブルが発生した際も、そのITに強い職員が問題をさっと解決してくれます。
本当に心強い存在です。
だからといってMOS資格のスペシャリストの資格を保有したほうがいいというわけではありません。
資格保有者でも、その仕事に特化したPC操作ができるとは限りませんので。
あとパワポは使えたほうが良いです。
住民説明会、業務説明会、会議、講演など様々なときに使用します。
【関連記事】【公務員】パソコン時短におすすめの本を元県庁職員が紹介!
コミュニケーション能力
公務員にもっとも求められるスキル、それは「コミュニケーション能力」だとはっきり言えます。
ありきたりなことで申し訳ないですが、やはり公務員でもすごくコミュニケーション能力は必要なんです。
公務員はとにかく「ほうれんそう」(報告、連絡、相談)が多かったり、企画立案、調整業務、予算折衝、議員対応、窓口対応、業者打ち合わせ、専門委員会、上司・管理職へのレク、住民説明会、根回しなどなど、コミュニケーション能力が高くないと仕事がスムーズに回っていきません。
コミュニケーション能力がどんなに酷くても公務員はクビにはなりませんが、出世は無理です。
ぜひ、学生時代からしっかりコミュニケーション能力を磨いておきましょう。
コミュニケーション能力の磨き方については、まずは「自己啓発系の本」で勉強しましょう。
例えば、D・カーネギーさんの【決定版カーネギー】話す力: 自分の言葉を引き出す方法は名書中の名書です。
コミュニケーション能力を高める具体的な方法がたくさん掲載されています。
(画像をクリックすると、Amazonの商品紹介ページに進みますので良ければご覧ください。)
また、池上彰さんの「話す」「書く」「聞く」能力が仕事を変える! 伝える力 (PHPビジネス新書)も非常に分かりやすい良書です。
勉強スキル
公務員になると非常に幅広い業務知識、関連法規などを覚えていかなくてはいけません。
しかも異動が数年に一回あり、定年になるまで次々と新しい部署に配属し続けるため、生涯勉強し続けなくてはいけません。
そこで「勉強スキル」があると、仕事関連知識も早く覚えられ、実務に活かせます。
そうなると、自然と仕事の評価も上がってきます。
勉強スキルについては、やはり自己啓発系の本を読んで習得しておくことをおすすめします。
(参考)公務員は無試験で行政書士になれる
一定年数以上公務員をしていると、なんと無試験で行政書士になれます。
国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間が通算して20年以上(学校教育法による高等学校を卒業した者その他同法第90条に規定する者にあたっては17年以上)
引用:日本行政士会連合会
つまり、高校卒業後、公務員として通算17年働ければ、行政書士として登録することができます。
【参考記事】【試験免除】公務員は無試験で行政書士になれる(経験年数の条件あり)
まとめ~資格はあまり役立たない~
公務員の仕事に資格は必要ありませんし(技術職は除く)、民間のように資格手当の支給もありません。
公務員は幅広い業務を担当し、かつ数年ごとに異動しますので、その度その仕事内容・実務の専門家にならなければいけません。
常にジェネラリストであり、スペシャリストでいなければいけません。
資格取得と実務能力では、雲泥の差があります。
資格取得をしたからといって、実務能力が段違いにあがるわけではありません。
最適なのは実務をこなしながら関連法規や事務処理の流れを覚えていくことです。
なので、資格を取得する時間があったら、まずは自分の業務内容を勉強したほうがいいです。
また、出世を望むなら、資格取得ではなく、とにかく上司や管理職の信頼を勝ち取っていくことが大切です。
信頼を勝ち取っていくには資格取得よりも、実務スキル・コミュニケーション能力の向上、公務員の仕事の仕方を若手のうちにしっかりマスターすることが大切です。
若いうちに基礎がなっている職員はやはり伸びますし、すぐ頭角を現します。
公務員の仕事の仕方に関しては、以下のような公務員用の書籍が出ていますので、ぜひ公務員になる前や新卒採用時に読んでおくことをおすすめします。
他にも公務員に関する記事を書いていますので、良かったらご覧ください。