今回の記事では、公務員の引越し手当(赴任旅費)について、さくっとご紹介します。
- 公務員試験に合格し、勤務地の近くへ引越す受験生
- 引越しをする予定がある公務員
に役立つ記事となっています。
- 引っ越し代は「実費」支給(自治体によっては定額の場合もあり)
- 自己都合の引越しは対象外
※異動に伴う引越し手当の正式名称は、「赴任旅費」あるいは「特殊旅費」です。本記事では「赴任旅費」で統一します。
地方公務員の場合(長野県、高知県の例)
今回の記事では、情報が確認できた長野県と高知県の赴任旅費についてご紹介します。
両県ともに引っ越し代は、実費分が支給されます。
ただし、支給額には距離に応じて上限が設けられていて、荷物の量や頼む業者によっては上限を超えてしまうこともありえます。
異動が決まるのは3月、その頃は引越しのハイシーズン、荷物が少量でも引っ越し代はかなりの額となります。
それでは長野県、高知県の赴任旅費についてみてみましょう。
赴任旅費(長野県)の支給額
移転料(実費支給) | (上限) 50km未満 107,000円 50km~100km未満 123,000円 100km~300km未満 152,000円 300km~500km未満 187,000円 など |
着後手当(注意:礼金及び不動産手数料のみ対象)※ | 52,000円(上限) |
移転雑費 | 20,000円(定額) |
扶養親族移転料 | 引越しのさいに扶養親族を旧居住地から新居住地まで随伴する場合は、交通費などが支給されます。 |
※着後手当:礼金など以外にも特別な事情ですぐに新しい住居に住めないときは最大5泊分を上限として支払った額を支給
(参照元:一般職の職員の旅費等に関わる条例)
赴任旅費(高知県)の支給額
移転料(実費支給) | (単身者・上限) 8km~50km未満 80,250円 50km~100km未満 92,250円 100km~300km未満 114,000円 300km~500km未満 187,000円 など |
着後手当(注意:礼金及び仲介手数料のみ対象)※ | 55,000円(上限) |
移転雑費(単身の場合) | 10,000円(定額) |
職員移転料 | 旧居住地から新居住地までの交通費や宿泊料などが支給 |
扶養親族移転料 | 扶養親族を旧居住地から新居住地まで随伴する場合は、交通費などが支給 |
※着後手当:礼金など以外にも特別な事情ですぐに新しい住居に住めないときは最大5泊分を上限として支払った額を支給(1泊あたり7,300円上限)
(参照元:高知県新規採用職員の赴任旅費について)
長野県と高知県を見比べると、そこまで大きな金額の差はありませんでした。
このほか、移転料の上限を超えている場合で、要件を満たし、かつ、任命者がやむを得ないと認めるものに限り、下表の上限額が適用されることになっています。
距離(一例) | 単身者・上限 |
---|---|
8km~50km未満 | 160,500円 |
50km~100km未満 | 184,500円 |
100km~300km未満 | 228,000円 |
300km~500km未満 | 280,500円 |
※適用要件:原則として3社以上の引越し業者から最も安いプランで見積りを徴し、最も安価な引越し業者を選定すること。
細かい金額などについては、自治体で多少違うので、詳細なデータを知りたい場合は、ご自身の自治体の旅費法や旅費マニュアルをみるか事務担当者に確認してください。
国家公務員の場合
国家公務員にも赴任旅費はあります。
移転料については、「定額」となっています。
令和2年3月23日以降、当分の間は、定額ではなく3社見積もりによる実費支給となっていました(実費が定額の3倍を超える場合は財務大臣と別途協議の上、個別に判断)。しかし、現在は撤廃している機関があります。色々と調べてみましたがこの撤廃されているかどうかがよく分かりませんでした。機関ごと違うかもしれないので勤務される機関での最新の通達を確認したり、赴任旅費担当者に取り扱いを確認することをお勧めします。
移転料(定額※1) | (独身者の上限・三級以下の職務にある者) 50km未満 46,500円 50km~100km未満 53,500円 100km~300km未満 66,000円 300km~500km未満 81,500円 500km~1000km未満 108,000円 など |
着後手当※2 | (2級以下の職務にある者) 8,500円(定額) |
扶養親族移転料 | 引越しのさいに扶養親族を旧居住地から新居住地まで随伴する場合は、交通費などが支給されます。 |
(参考:e-Gov法令検索 国家公務員等の旅費に関する法律)
※1:独身者の移転料=定額÷2(独身者は半額となるため)
※2:着後手当:日当定額の5日分
国家公務員の赴任旅費については、財務省が2023年4月28日時点で定額支給方式を維持するか、実費支給方式を導入するか議論していました。
(参考資料:財務省「国家公務員等の旅費制度の見直し」)
2024年4月26日、国家公務員の改正旅費法が26日に議会で可決、成立しました。これにより移転料は定額から上限付きの「実費支給」となり、令和7年4月1日施行予定となっています。
(参考資料:財務省「国家公務員等の旅費制度の改正」)
赴任旅費の注意事項(支給されない場合)
自己都合の引越しは対象外
赴任旅費はあくまで新しい職場に赴任するために引っ越しした場合のみに支給されます。
そのため、以下のような異動とは関係のない「自己都合の引越し」、
- 結婚したから広いアパートに引っ越しした
- 新しいキレイなアパートに住んでみたかったから引っ越しした
- 格安の職員宿舎が空いたので移った
- 実家住まいが嫌になってアパートに移り住んだ
こういった場合は、赴任旅費は支給されませんのでくれぐれもご注意ください。
人事異動発表前に引越しした場合
新規採用者にありがちなミスですが、人事異動発表前(内示前)の引越しは赴任旅費の対象となりません。
あくまで、人事異動(内示)で勤務先が決まったあとでの引越しが対象です。
4月の赴任以降に引越しした場合
内示以降、多忙で引越しができず、4月以降に引越しをする職員もいると思います。
その際、赴任旅費の対象になるかですが、高知県の場合、新規採用職員の赴任旅費の支給対象となる転居は原則採用日から原則1ヶ月以内の転居としています。
(引用:高知県HP赴任旅費Q&A)
着後手当は敷金には支給されない
引越しをした際に「着後手当」が支給されますが、その対象はあくまで「礼金」と「不動産手数料(仲介手数料)」のみです。
敷金や前家賃、駐車場代、管理費等は対象外ですので注意してください。
どこまでが対象となるかは、都道府県で考え方が違う場合もあるので、引越し前に総務担当者によく確認することをおすすめします。
個人で荷物を異動した場合は対象外
移転料はあくまで引越し業者等に支払った料金について支給するものです。
そのため、
- 自分でトラックを借りる
- 友人からトラックを借りる
などして荷物を搬送してしまうと、移転料は支払われませんのでご注意ください。
駐車場は着後手当の対象外
移転したあとに、アパートに駐車場がなく、新規に駐車場を借りる場合の礼金や仲介手数料は着後手当の対象外です。
駐車場借り上げに係る経費は支給されません。
まとめ
ここまで公務員の引越し手当(赴任旅費)についてご紹介してきました。
注意ポイントとしては、「自己都合の引越しは赴任旅費の対象外」ということです。
赴任旅費をあてにして引越ししたにも関わらず、支給されなかった場合はかなりの出費となります。
あと、必ず「領収書」は保管しておくようにしましょう。
赴任旅費の請求書類に領収書の添付が必要となります。(この領収書の額で支給額を決めるので)
くれぐれもご注意くださいね。
引越し前に総務担当者や赴任旅費のマニュアル等で、
- いくら支給されるのか
- 何が対象となるのか
- 対象とならない場合はどのようなときか
- 必要な書類は何か
をしっかり確認するようにしましょう。