公務員はその身分の性質上、規律に違反すると「懲戒処分」がなされることが法律で定められています。
そして、悪質な場合などは「氏名」を公表されてしまいます。
今回は、公務員になるとどんなことで懲戒処分となるのか、実際の事例を使って紹介します。
公務員の懲戒処分のタイプ
公務員の懲戒処分には以下の4種類があります。
(「人事院HP服務・懲戒制度」より)
後の方ほど重い処分となります。
- 戒告:その責任を確認し、将来を戒める
- 減給:1年以下の期間、俸給の月額の5分の1以下に相当する額を給与から減ずる
- 停職:1日以上1年以下の期間、職務に従事させず、給与は支給されない)
- 免職:(いわゆるクビ)
このほか軽微な処分(内規に定められている)として、
- 訓告
- 厳重注意
- 口頭注意
などがあります。
さらに、懲戒処分とは別に「分限処分」というものがあります。
懲罰的な懲戒処分とは違い、公務の効率性を保つことを目的に行われる処分です。例えば、心身故障のため病気休職が続いている職員で、病状は回復せず、職務の遂行に支障がある場合は分限処分が行われ、職員の意に反して免職となる場合があります。※公務員の休職期間の限度は3年が目安。国家公務員は休職期間が3年を経過する際に、指定する医師2名が治癒し難い心身の故障と診断した場合は降格または免職となる。
公務員の懲戒処分の事例
公務員の懲戒処分について、実際の事例(国、北海道、東京都などの一例)をいくつか紹介します。
(※「人事院懲戒処分の事由別処分事例」、「北海道庁の過去3年の懲戒処分一覧」、「東京都総務局職員の懲戒処分等について」などより抜粋)
【免職(クビ)】
- 病気休暇の不正取得(約138日間)
- 飲酒運転(内容によっては停職)
- 強盗未遂(コンビニ強盗未遂)
- 強制わいせつ
- 窃盗(備品のデジタルを売却)
【停職】
- 正答な理由のない欠勤(31日3時間15分) 停職6月
- 窃盗(書籍万引) 停職5月
- 痴漢 停職4月
- 児童ポルノ 停職1月
- 18歳未満の少女といかがわしい行為 停職6月
- 盗撮(トイレにビデオ設置) 停職4月
- 盗撮(スマホでスカートの下から) 停職1月
- わいせつな行為 停職3月
- チケットの転売(約4,700万円の売上) 停職3月
- 窃盗(衣料品8万円相当) 停職
- 酒気帯び運転の車に同乗 停職
【減給】
- 正答な理由のない欠勤(13日) 減給3月
- 暴行(部下の態度に立腹、暴行) 減給2月
- アパートを賃貸(営利企業従事許可を得ず) 減給1月
- セクハラ(卑猥なメールを繰り返し送信) 減給6月
- セクハラ(女性にメール) 減給1/5・1月
- 無断謝礼(知人の経営する会社を手伝った謝礼を受取る) 減給3月
- 速度違反の報告を怠る(30km/h以上の速度超過) 減給1月
- 速度違反など(37km/h超過) 減給1月
【戒告】
- パワハラ(自尊心を傷つける言動)
- 職場内暴力行為(部下に暴言を吐き、足を蹴る)
- 通勤手当の不正受給(バス通勤で通勤届を申請していたが実際は自家用車通勤)
- 正答な理由のない欠勤(1日)
- 交通事故(公務中、信号無視対面衝突)
- 交通事故(自損事故、公用車の一部損傷)
- アルバイト(有料山岳ガイド、関連雑誌の連載)
- スピード違反(50km/h超過)
非違行為の内容によって、免職や停職の期間が変わってきます。
また、常習性や悪質性も考慮されます。
公務員の懲戒処分の基準
公務員の懲戒処分の基準はしっかりと定められています。
例えば、国家公務員では人事院の「懲戒処分の指針について」を参考に処分量定を決めています。
具体的な処分量定については、
- 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
- 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
- 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか
- 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
- 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の上判断するものとする。
引用:人事院「懲戒処分の指針について」
となっています。
公務員の懲戒処分は公表される
公務員が懲戒処分を受けると「公表」されることになっています。
【公表内容】
- 発生年月日
- 職層
- 所属局名
- 年齢及び性別
- 事件概要
- 処分内容
- 処分年月日
ただし、免職を行った場合、又は争議行為等、社会に及ぼす影響が大きい事案は、「氏名まで公表」する場合もあります。
(※東京都総務部人事部「懲戒処分の指針」より)
受験生、採用予定者、試用期間中も懲戒処分に注意!(特に速度超過)
現役公務員ももちろん規律を守って公務に当たらなければなりませんが、
「受験生」
「採用予定者」
「試用期間中の公務員」
も特に普段の生活に十分注意して過ごしてください。
例えばですが、「道路交通法違反」は意識して気をつけていたほうがいいです。
その中でも「速度超過」が危ないです。
実際の速度超過で懲戒処分になった事例を参考までに挙げておきます。
- 函館市 39km/h超過 減給1/10
- 松本市 36km/h超過 戒告
- 滝沢市 30km/h以上50km/h未満 戒告
- 富山県 51km/h超過 戒告
- さいたま市 40km/h超過 戒告
- さいたま市 32km/h超過 戒告
- 東京都 30km/h超過 戒告
- 国家公務員 50km/h超過 戒告
これらは現行犯のみでなく、オービスの場合もあります。
「高速道路」や「40km規制の道路」では気をつけて運転していないと、簡単に30kmの速度超過になってしまいます。
警察の厄介になった場合は、上司に報告する義務があり、そこから人事課まで伝わります。
面倒くさい「始末書」も書かなくてはいけません。
そして、懲戒処分対象になると「人事カード」に記録され、退職までその記録が残り、出世に悪影響を及ぼします。
新規採用者は4月から半年間は「試用期間(条件附採用期間)」扱いとなり、その間は公用車や自家用車での通勤を認めていない自治体があります。
その間に仮に警察の厄介になってしまうと非常にまずいです。
同様に受験生や合格した採用予定者も十分注意してください。
他にも公務員関係の記事を書いていますので、良かったらご覧ください。