【元県職員が語る】県庁の出先機関の実態とは?本庁との違いや働きやすさを解説!

「県庁の出先機関って、本庁より楽なの?」

「出先に配属されたら出世できないって本当?」

こんな疑問を持っている受験生や新規採用者の方は多いのではないでしょうか。

この記事では、県庁の本庁と出先機関の両方を経験した筆者(元県職員・9年)が、実体験をもとに「県庁の出先機関の仕事内容・働き方・人事の実情」などについてわかりやすく解説します。

特に以下のような方に役立つ内容です。

  • 新規採用で出先機関に配属される予定の方

  • 県庁を志望している受験生

  • 出世やキャリアパスについて不安がある方

県庁の出先機関とは?具体例と役割を紹介

出先機関とは、県民や事業者、市町村に直接行政サービスを提供する現場の施設のこと。多くは県内の各地域に分散して配置されています。

例として新潟県の出先機関を一部ご紹介します。

  • 地域振興局 12箇所
  • 保健所(地域振興局に併設) 12箇所
  • 福祉事務所(地域振興局に併設) 5箇所
  • 児童相談所(地域振興局などに併設) 5箇所
  • 工業技術総合研究所
  • 佐渡トキ保護センター
  • 食肉衛生検査センター 2箇所
  • 精神保健福祉センター
  • 労働相談所 3箇所
  • 万代島美術館
  • 農業総合研究所
  • 農業普及指導センター(地域振興局に併設) 13箇所
  • 家畜保健衛生所 4箇所

など、たくさんの現地機関があります。(参考:新潟県HP 機構図

(出先機関の種類や名称などは各都道府県で異なります。)

地域振興局には、本庁(県庁)にあるいくつかの部署が集約されていて、「本庁のミニ版」、「本庁の機能が集約された施設」となっています。

出先機関が直接的な行政サービスを行っているのに対して、本庁では政策・予算案立案、議員対応、国対応、出先機関の取りまとめなどを行っています。

本庁と出先機関の違いは?

本庁と出先機関では、担当する業務の性質が大きく異なります。

  • 本庁:政策の企画立案、予算編成、議会・国対応、議員対応・マスコミ対応、出先機関の管理など

  • 出先機関:行政サービスの現場実施(窓口業務、現場指導、住民対応など)

本庁はマクロ的な業務が中心ですが、出先機関では住民や現場と直接関わる「現場型」の仕事が多くなります。

出先機関=出世コースから外れる?その実情

「出先に行く人は出世できない」というイメージ、確かに一部は当たっていますが、すべてがそうではありません。

本庁内で主要部署を歴任し、国に出向するような人はたいてい出先機関を経由しません。

しかし、出先からスタートし、実績を積んで本庁に異動し、最終的に部長職まで昇進した人もいます(実際、筆者の知人にもそういう人がいます)。

特に技術職は、出世コースに乗っていても本庁と出先を交互に経験するケースが多く、行政職と比較して異動パターンがやや異なります。

伯爵さん
ちなみに、新規採用者で初任地が出先機関というのは、出世コースから外れたわけではありませんので落胆しないでください

新規採用者で初めから本庁勤務なのは、

  • 高学歴な人(東大京大、旧帝大、早稲田慶応など)
  • 採用試験の成績が上位の人
  • 採用面談で本庁勤務を強く希望した人

などが行くだけであって、「本庁勤務にならなかったから自分はもう出世できない」とは思い込まないでください

伯爵さん
ちなみに私は首席(技術職)で入庁しましたが、出先機関からのスタートでした。2箇所現地機関を回ったあと本庁勤務となりました

出先機関の仕事は本庁より楽なのか?

これは「はい」と答えて差し支えありません。理由は以下の通りです。

①仕事の質・量ともに軽め

本庁では予算折衝や議員・国対応などプレッシャーのかかる業務が多く、出先機関ではそれに比べて定型的な業務が多い傾向にあります。

②残業時間が少ない

例えば、令和5年度の長野県一般行政職員の残業時間ですが、

区分残業時間(一人あたり)
本庁248時間
出先機関102時間

となっていて、本庁と出先機関では倍違います。(引用:長野県「人事行政の運営等の状況の公表」)

③精神的ストレスも少ない

本庁のような激しい調整業務や他部局・議員・マスコミとの折衝が少なく、人間関係も比較的穏やかです。

ただし例外もあり!

  • 災害対応

  • 会計検査

  • 大規模イベント

  • 忙しい職種(児相・農業普及員・土木設計部署など)

これらに関わる出先職員は、本庁並み、あるいはそれ以上の激務になることもあります。

私自身、出先勤務時に連日残業・休日出勤が続いた経験があります。

地元の出先機関を希望する職員は多い

かなり突っ込んだ話になりますが、出世欲があまり高くない職員は、できれば仕事が楽な出先機関に配属されるのが本望です。

なるべく仕事が落ち着いていて、かつ自宅・実家から通える地元の出先機関への配属を希望する傾向があります。

とはいえ、異動は本人の希望どおりになるとは限りません。

毎年11月頃に行われる人事面談で希望は聞かれますが、実際には人事の都合や組織バランスで決まることが多いです。

介護・育児・病気などの事情があれば、配慮されやすい傾向はあります。

給料は本庁でも出先でも同じ

待遇面については、本庁勤務・出先勤務で差はありません

どちらにいても昇給や手当の基準は共通です。

伯爵さん
どんなに本庁での仕事が多忙を極めても、現地機関の楽な仕事をしている職員と給料は基本的に変わりません。(本庁でバリバリ働き出世して先に昇任することはあります)

若手のうちは本庁勤務を経験しておこう

出先機関の方が働きやすいとはいえ、若手のうちは一度は本庁勤務を経験することをおすすめします。

  • 幅広い行政の仕組みを理解できる

  • 出先勤務時に視野が広がる

  • キャリア形成にもプラス

  • 人脈が一気に広がる

私がいた県では、2~3回目の異動までに1回は本庁を経験するという流れが基本でした。

そして、そこでの働きぶりによって次の異動先(本庁に残るか出先に戻るか)が決まっていく、いわば「選別」の場でもありました(特に行政職の場合)。

まとめ|出先機関は働きやすいが、本庁経験も大切

県庁の出先機関は、本庁に比べて仕事の負担が軽く、働きやすい環境であることは事実です。

ただし、部署やタイミングによっては忙しいケースもあるため、「どこでも楽」というわけではありません。

若手のうちは一度は本庁勤務にチャレンジしておくと、視野が広がり、今後のキャリアに大きなプラスとなるでしょう。

とはいえ、無理は禁物です。

私自身、本庁勤務で過労やパワハラにより体調を崩してしまいました。

「県職員としてのキャリア」と「健康・家庭・プライベート」のバランスをとりながら、自分に合った働き方を見つけてくださいね。

伯爵さん
ここまでお読みいただき本当にありがとうございます☆
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