これから投資を始めたい、投資に興味がある人は、数ある投資のなかでどの投資が自分に向いているのか、調べれば調べるほど迷ってきますよね。
今回は、一例ではありますが、投資の代表格である「株式投資」と誕生してまだ歴史が浅い「暗号資産(仮想通貨)」の違いについて見ていきたいと思います。
それぞれ、投資という面では同じですが、内容は全く異なります。
よくその点を理解して、自分の投資目的に適した手法を選択していきましょう。
※なお、「仮想通貨」という呼称は、資金決済法の改正(令和2年5月1日施行)により、法令上、「暗号資産」へ呼称変更されています。
本記事では、混乱を避けるため「暗号資産(仮想通貨)」か「暗号資産」で表記統一しています。
暗号資産(仮想通貨)と株式投資の違いは?
それでは早速暗号資産と株式投資の違いについてさくっと解説していきます。
そもそも暗号資産ってなに?株式投資ってなに?
以下に用語解説を示しましたが、全く異なる性質のものだということが分かります。
一言で言えば、暗号資産は「通貨」(100円硬貨や1000円札のような法定通貨ではない)、株式は「株券」です。
暗号資産は「投資、決済、送金」などができ、
株式投資は「投資家が企業を応援する、あるいは企業が資金調達する」ことができます。
暗号資産
仮想通貨は、インターネット上で自由にやりとりされ、通貨のような機能を持つ電子データです。仮想通貨は、銀行を使わなくとも、個人がインターネット上で自由に移転させることができるため、近年、ショッピングなどの際に、支払・資金決済ツールとして利用される機会が増えてきています。有名な仮想通貨として、例えば、ビットコイン(Bitcoin)があります。
引用:政府広報オンラインより
株式投資
株式(株券)は、株式会社に資金を出資している証明として、株主に対して発行されます。そして、株主が株式会社へ出資した資金は、会社が存続する限り払戻されません。株主が株式を換金しようとするときは、株式市場で売却することになります。
株式投資とは、将来性のある企業、良い商品やサービスを提供している企業を支援することによって利益(リターン)を得ることを意味しており、自分の資産形成にとっても意義がありますし、その会社に出資して資金面で応援するという楽しみや、会社を育てて、経済や社会の発展に寄与するという、社会的な意義ももっています。
投資(値上がり益)以外のお得ポイント
暗号資産
- 送金が瞬時にできる(特に海外送金がお得です。手数料も安い。)
- 決済ができる(支払いできるお店が徐々に増えてきています。)
など、財産価値があり、通貨として利用できます。
株式投資
- 配当金がでる(1株あたり1円もらえたり、10円もらえたり、企業によって様々です。出していない企業もあります。)
- 株主優待がもらえる(クオカード、お食事券、自社製品など。出していない企業もあります。)
など
法律上の扱い
暗号資産
「改正資金決済法」で財産的価値を認めています。
ただし国が管理する法定通貨ではありません。
暗号資産は国が管理していない通貨です。
株式投資
「金融商品取引法」で有価証券の発行、売買その他の取引について定めています。
時価総額
暗号資産
約340兆円(2021年11月9日時点、全世界・全暗号資産の合計)
株式投資
約735兆円(2021年10月29日時点、東証一部のみの数値)
リスク
暗号資産
- 損失が生じる可能性があります。
- 株式投資に比べ、値動きが激しく、また予測が難しいです。
- 取引所のセキュリティ面。(これまでにたびたび暗号資産が流出する事件が起きています。)
- 株式投資と違い、1日の制限値幅がないので、どこまでも上がる反面、どこまででも下がる危険性があります。株式投資では制限値になるとストップ高・ストップ安となりそれ以上は上がり下がりしません。
- 国が管理している法定通貨ではないので、いわば「管理者が不在の状態」で、何かあったときに対応に困る可能性が無いとは言い切れません。(逆に国が管理していない点がメリットにもなり得ます)
株式投資
- 損失が生じる可能性があります。
- 投資していた企業が倒産した場合、株券の価値がほとんどなくなるリスクもあります。
- 投資金額が暗号資産よりも高くなることが多く、暴落した際の損失額が大きくなる可能性があります。
価格変動の幅
暗号資産
- 1日に10%以上変動することもあります。
- 株式投資に比べ、暗号資産のほうが変動は大きい傾向があります。
株式投資
- 銘柄によって、変動幅には差があります。
- 好材料・悪材料により、暴騰・暴落する場合もあり、暗号資産よりも変動が激しくなる可能性も十分あります。
1日や短期間だとそこまで差はないと思いますが、ここ数年間を見比べると暗号資産のほうが変動幅は大きいです。
(銘柄によっては暗号資産よりも変動幅が大きいものもあります)
【注意】レバレッジ
暗号資産も株式投資もレバレッジをかけた投資は可能です。
ただし、FXのように高いレバレッジはかけられません。
レバレッジについては、初心者は手を出さないほうが無難です。
やるにしても十分に知識や経験を積んだ上で行うようにしましょう。
レバレッジを効かせた投資では、元手がゼロになるだけでなく、場合によっては借金の恐れもありますので。
価格の推移(2016年~2019年)
暗号資産
「ビットコイン(暗号資産の代表格)」・・・2016年12月 約8万円台 → 2017年12月 約220万円台 → 2018年12月 約36万円台 → 2019年12月 約70万円台
2016年12月から2017年12月までで約28倍になっています。
その後も価格変動が激しい状態が続いていましたが、2017年の暗号資産バブル以降は一気に億万長者になれるという人は減ってきたのではないでしょうか。
株式投資
「日経平均株価(日本を代表する企業225社の平均株価)」・・・ 2016年12月 約18000円台 → 2017年12月 約23000円台 → 2018年12月 約20000円台 → 2019年12月 23000円台
日経平均株価では、暗号資産(ビットコイン)に比べると価格はそれほど変化していません。
ただ、年に何種類かの銘柄は株価が10倍以上になるものもありますので、ここは銘柄次第ということになります。
税金
暗号資産
- 暗号資産での利益は雑所得となります。
- 雑所得は総合課税方式で税率が計算されます。
- 総合課税方式は、給与所得など他の収入と合わせた額に対して税率が決まる税方式で、株式投資よりも税金は高くなる可能性があります。
- 例えば、給与500万円+暗号資産利益100万円だと、約42万円の税金となります。
- 例えば、給与1000万円+暗号資産利益1000万円だと、約280万円の税金となります。
株式投資
- 株式投資では、値上がり益は譲渡益課税、配当金は配当課税となります。
- これらは分離課税方式で税金が計算されます。
- 分離課税方式は、給与所得など他の収入とは切り離して税率が決まる税方式です。
- 税率はどちらも同じで、20.315%です。(所得税15.315%+住民税5%)
- 例えば、給与500万円+株の値上がり益100万円だと、株の値上がり益分の税金は約20万円になります。これとは別に給与500万円分の税金が課税されます。
暗号資産と株式投資の取引における違いは?
取り扱い種類(銘柄)
暗号資産
ビットコイン、イーサリアム、リップル、ビットコインキャッシュ、ライトコイン、モナコイン、ネムなどが多数の暗号資産があります。
「ビットコイン」が暗号資産の代表格で、その他の暗号資産は「アルトコイン」とも呼ばれます。
さらに誕生したばかりで価値があまりない暗号資産は、「草コイン」とも呼ばれます。
なお、取引所によって、売買できる暗号資産が限られているので注意が必要です。
株式投資
投資できる企業(銘柄)は約3700社あります。(2021年11月13日時点)
(場合によっては、テクニカル分析やファンダメンタル分析などのスキルも必要)
購入費用
暗号資産
取引所や取引量にもよりますが、数百円程度から買うことができます。
株式投資よりも少ない資金で気軽に始めることが出来ます。
株式投資
取引する銘柄によってかなり差がありますが、ある程度の投資資金が必要です。
必要ですが1万円程度~10万円程度で購入できる銘柄も多数あります。
さらに、いわゆるミニ株(単元未満株、1株単位)などを利用すれば、数百円~数千円程度で株式投資を始めることは可能です。
取引時間
暗号資産
24時間365日取引が可能です。
土日も取引ができます。
株式投資は基本的に平日昼間しか取引できないので、この点についてはかなりのアドバンテージです。
株式投資
東京証券取引所は、9時から11時30分、12時30分から15時までとなっています。
※東京証券取引所以外の取引所(名古屋、札幌、福岡)は15時30分まで取引できます。
土日祝日、年末年始は取引所が休みのため取引は行われません。
基本的にカレンダーどおりと考えておけばいいでしょう。
なお、一部証券会社では夜間取引できるサービスを行っているところもあります。
(ただし、参加者が少なく取引がなかなか成立しません)
手数料
暗号資産
取引所によって手数料は変わってきます。
無料のところもあれば、少額のところもあります。
口座への入出金手数料、スプレッド、レバレッジ手数料、暗号資産FX、取引所・販売所でもそれぞれ手数料がかかったり、かからなかったりします。
取引所に口座開設する際はしっかりと手数料を比較することをおすすめします。
例えば、「Coincheck(コインチェック)」の場合、(2020年10月現在)
他の多くの取引所と同じように、口座開設手数料や口座維持手数料は無料です。
日本円の入金手数料ですが、銀行振込の場合、銀行の手数料はかかりますが、Coincheckの手数料は無料となっています。日本円の出金手数料は、金額に関わらず一律407円です。
ビットコイン取引所手数料は今のところ無料で、仮想通貨の入金手数料も無料です。仮想通貨の送金手数料は、通貨ごとに異なります。
ビットコイン(BTC)の送金手数料は、0.001BTCです。ただし、Coincheckユーザー同士の送金は、全ての仮想通貨で無料です。
株式投資
証券会社によって、手数料は変わってきます。
取引額が少額だと無料となるところも多くなってきています。
例えば、「SBI証券」の場合(2021年11月13日現在)
口座開設の流れ
暗号資産
【Coincheck】の場合
- 新規アカウント作成
- メールアドレス、パスワードの登録
- 重要事項承諾・電話番号登録(SNS認証)
- 本人確認書類の提出
- 審査完了通知の受理
最短で翌営業日には売買が可能となります。(かんたん本人確認利用時)
株式投資
【SBI証券】の場合
- 口座開設申込(ネットか郵送を選べる)
- 本人確認書類の提出(マイナンバー確認書類+本人確認書類)
- 初期設定(勤務先や銀行口座の登録など)
- 完了通知の受理(メールもしくは郵送)
最短で翌営業日には売買が可能となります。(ネットで開設の場合。郵送の場合は10日程度かかるようです。)
なお、暗号資産、株式投資どちらも口座開設費用はかかりません。
取引所(販売所)
暗号資産
暗号資産を売買するには「金融庁から許可を受けている国内の交換業者※」か「海外の取引所」を利用します。
国内交換業者としては、
- コインチェック
- ビットフライヤー
- DMM Bitcoin
- GMOコイン
- TAOTAO
- ビットバンク
などがあります。
※国内で暗号資産と法定通貨との交換サービスを行う場合には、暗号資産交換業の登録が必要となっていて、2021年11月1日現在、暗号資産交換業者は31社あります。
登録業者一覧をご覧になりたい人は「金融庁HP 暗号資産関係のページ」をご参照ください。
株式投資
株式は証券会社を通じて買うことが出来ます。
証券会社は多数ありますが、いくつか例をあげます。
- SBI証券
- 楽天証券
- 松井証券
- SMBC日興証券
- ライブスター証券
- マネックス証券
- 岡三オンライン証券
- DMM.com証券
- GMOクリック証券
- LINE証券
などなどです。
手数料が違ったり、オリジナルの取引ツールが利用できたり、証券会社ごとに特徴があります。
それぞれの証券会社でメリット・デメリットがあるので口座開設前にしっかり比較してみることをおすすめします。
結局、暗号資産(仮想通貨)と株式投資、どっちがおすすめ?
将来性
暗号資産
ビットコインが運用開始されてから約10年程度と、株式投資に比べたら歴史がまだまだ浅い暗号資産。
どんどん新しい種類が登場するなど、著しく成長している最中で、今後の「伸びしろ」が十二分にあります。
暗号資産に使われている「ブロックチェーン技術」も注目されていて、技術を取り入れ始めている企業もあります。
時代はグローバル化、そしてボーダレス化しています。
国ごとに違う通貨を利用する時代が終わり、国から管理されていない暗号資産が統一通貨となるなんてことだって全く可能性がないわけではありません。
そう考えると暗号資産には夢があり、今後そういったことを期待されて、価値が上がっていく可能性も考えられますね。
あくまで個人的見解ですが。
株式投資
暗号資産と比べ、成長スピードは鈍化しているように感じます。
特に日本は少子高齢化が進み、ますます経済活動は衰退していくとの見方もあります。
また、昨今のコロナウイルスの影響で経済活動は大打撃を受けました。
ここをどう生き抜いていくか、どうwithコロナに順応して経済活動を行っていくか、企業としては大きな分かれ目となるでしょう。
適応できた企業は伸びますし、適応できなかった企業は衰退していきます。
厳しいですがそれが現実です。
株式投資は企業の行末を予想して、投資する必要がありますので、ますます業績を見極める力が必要となってくると思います。
ただ、今後伸びていくと考えられている分野もあり、そういった分野をいち早く見極め、将来性に投資できればまだまだ株式投資で利益を出すことは可能だと私は思っています。
投資の際の注意点(共通)
初心者が暗号資産投資や株式投資を行う際には、以下の2点を徹底すればリスクは軽減できます。
- 「余裕資金」で投資
- 「少額投資」で投資
短期間に大きく儲けようとして、貯金や生活資金を一度に投入すると、大変リスクが高まります。
初心者が簡単に勝てるような世界ではありません。
ぜひ、初めて投資を行う際は、最悪なくなっても困らない余裕資金で、その中から少しの額でまずは小さく投資をしてみることをオススメします。
相場の世界では、証券会社のプロトレーダー、ベテラン、専業投資家、社会人、学生、主婦、無職、初心者も関係なく、皆が同じ土俵のうえで戦うことになります。
初心者がその中で渡り合っていくには、「知識・トレードスキル・経験値」を負けながらも高めていく必要があります。
その際に、余裕資金の中の少額であれば、仮に損してもたかが知れているので、精神的に不安定になることもなく、また、相場から退場を余儀なくされるリスクも減ります。
ぜひ、初めての投資は「余裕資金」・「少額投資」を心がけましょう。
投資目的や自分の性格で選ぶ
結局、暗号資産投資と株式投資、どっちが良いかといいますと、私個人の意見ですが、
「投資目的、投資資金、リスク許容度、自身の性格」と上記で挙げた違いを踏まえて、自分に合った投資の種類や投資手法を選ぶのがいいでしょう。
一例ですが、
- お金に余裕があり、リスクがある程度許容でき、年齢も若く、短期で稼ぎたいという人は、ハイリスク・ハイリターンの「暗号資産投資」「株式投資のデイトレード・スイングトレード」「集中投資」
- 中長期でじっくり稼ぎたいという人は、ローリスク・ローリターンの「暗号資産の少額積立投資」「株式投資の中長期投資」「投資信託」「分散投資」
がおすすめです。
「ん~それでも決めかねる」という人は、暗号資産と株式投資、どっちもやってみるのが良いでしょう。
本やネットの情報を見聞きするよりは、実際に身銭を切って投資してみるほうがはるかに暗号資産投資や株式投資のことがよく分かります。
「余裕資金」かつ「少額投資」でまずは試してみればリスクもある程度軽減できます。
なお、暗号資産投資をやってみたいけど、不安で迷っている人向けに記事も書いてありますので、もし興味があればお読みください。
仮想通貨(暗号資産)を始めようか迷っている公務員へ(基礎知識)